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【前編】Startup Weekend 特別インタビュー!100年の歴史の中で、変革とともにあるダイバーシティ

2022年11月18日(金)から20日(日)にかけて、Co-startup Space & Community FUSE(浜松市中区)にて第12回 Startup Weekend 浜松(スタートアップウィークエンド浜松、以下:SWH)が開催されます。

Startup Weekendとは、週末の3日間を利用してアイデアからビジネスを生み出す方法論を学び、実践できるスタートアップ体験イベントです。

SWHは、2016年の初開催から今回で12回目を迎えることになり、テーマが「Border-free Japan」に設定されました。少子化による国内市場の縮小や新興国市場の拡大などの要因により日本のグローバル化への対応が急務となりつつある中、外国人市民は 26,165人(22年8月現在)、国籍は80カ国以上と、多国籍化が進む浜松市においてとても意義深く重要なテーマであるためです。

今回は、第12回SWHのコーチを務めていただく、株式会社ソミックトランスフォーメーション 代表取締役の石川彰吾さんにインタビューをしました。新規事業開発に積極的に取り組む同社では、外国人材の採用をはじめとするダイバーシティの実現に努めているとのこと。

同社人事部の笠原義典さん、グローバル人材のムハマドコシ  イザトゥラー(コシ)さん、マージョリー ガディアノ(マージョリー)さん にもお話を伺いました。

石川彰吾さん|プロフィール

株式会社ソミックマネージメントホールディングス取締役 兼 株式会社ソミックトランスフォーメーション代表取締役

笹原義典さん|プロフィール

株式会社ソミックマネージメントホールディングス グローバル人事部部長

ムハマドコシ イザトゥラーさん|プロフィール

株式会社ソミックマネージメントホールディングス グローバル経営推進部 経営企画推進室 企画グループ インドネシア出身

マージョリー ガディアノさん|プロフィール

株式会社ソミックマネージメントホールディングス グローバル経営推進部 経営企画推進室 企画グループ フィリピン出身

ソミックグループを持続的可能な状態にしていくミッションのため、国内トップシェアのボールジョイント・ダンパーのメーカー株式会社ソミック石川のアメリカ現地法人における新規事業に参画。あわせて海外拠点における組織変革を推進するため、アメリカ現地法人における取り組み方を現地メンバーと考え、構築している。

目次

ソミックグループにとってダイバーシティは100年来ずっと求められてきたもの

(写真左から、笠原さん、コシさん、石川さん、光松、佐藤、マージョリーさん)

佐藤:ソミックグループは、1989年より積極的に海外展開を推進し、今では日本以外 6カ国に10の工場拠点があります 。さらに、従業員は国内ベースで約2,000人 、グローバル連結だと約6,000人と、事務や製造の両部門において外国籍の従業員の方々がグローバル人材として活躍しています。

そして、従来の方法にとらわれない事業領域・製品の新たな可能性に挑戦していくため、近年ではとくに新規事業領域における高度技能人材の採用も積極的に行っています。

まずソミックグループでは、「ダイバーシティ=多様性」をどのように捉えているのか教えていただけますか?

石川:ダイバーシティやインクルージョン(多様性な人材がそれぞれに活躍できる状態であること)は、今でこそさまざまなところで必要とされる概念です。しかし、私たちにとっては、創業以来ずっと求められ続けてたものではないかと考えています。

ソミックは107年前に、機織り機に使われるボルト部品をつくる鍛冶屋からスタートしています。その後、今のトヨタ自動車のベースを創られた豊田喜一郎さんが「国産車を創るぞ」と旗をかかげられ、弊社も参画させていただいたことから自動車部品メーカーとしての道が切り拓かれたのです。

さらに第2次世界大戦の終戦後、トヨタさんからボールジョイントをやってみないかとお声がけをいただき、ボルトナットからボールジョイントという走行の安全を支える部品にシフトしました。それ以降、ボールジョイントは約80年もの間、弊社の成長を支える主軸事業となりました。

このとき「自分たちがやることではない」と言ってしまえばそれまでのことだったでしょう。織機から自動車に移る発想もボールジョイントの製造をスタートしたことも、ダイバーシティの思想がないと生まれなかったと思います。

その後も、より多くの自動車メーカーの皆さんに使ってもらいたいという想いから、さまざまなお客さまとお会いしてきました。業界の変化を見据え、新しいことに取り組むために、多様な技術や新たな人材を受け入れるという変革を自ら行うことで、これまでの100年を乗り切ることができたのです。

結果として、日本を含めて7カ国へ拠点を拡大できました。次なる100年を創り上げるためにも、ダイバーシティは私たちにとって必要不可欠だと考えています。

大きなターニングポイント~海外展開~

佐藤:海外への視点や従業員の多様性実現といったダイバーシティには、どのようなきっかけで取り組みはじめたのでしょうか?

石川:明確なきっかけがあるわけではなく、自然な流れだったのですが、海外展開が大きかったと思います。なぜなら、我々は日本の会社だからです。海を越えて色んな人たちと新しいコトを作り上げていくことは、国内だけで事業をしていたときと異なるダイバーシティが求められました。

光松:海外展開をしたきっかけは何だったのでしょうか?

石川:それはソミック石川の5代目社長であった石川晃三の決断でした。日本の自動車メーカーさんが海外に進出した際に、私たちも現地へ進出し支え、新しい世界をともに創りたいと考えたのです。また石川晃三は、現地の皆さんに私たちの存在を知ってもらうことで、一緒に新しいコトを創りたいという思いを強く持っていたようです。

佐藤:海外にも挑戦する過程で、グローバル人材が活躍するために行ってきた具体的な活動内容を教えてください。

石川:今、弊社で大切にしていることをお話します。製造工程はそのまま持っていくというのは物理的には可能です。けれども、日本のやり方を現地にそのまま適用しようとしても成功しません。やり方や考え方は、それぞれの国の独自の文化や思想、教育、習慣を踏まえたうえで、現地での強みや良さを尊重して受け入れることが重要だと考えています。

「いいからやれ」とか、「これが日本のやり方だから同じようにやれ」と言われても、納得できないですよね。それよりも、現地の人が何を感じているかを聞きながら、創りたい世界や目標の共通認識に向かって双方向にやり取りすることが必要です。このやり取りを「2wayコミュニケーション」と私たちは呼んでいます。2wayコミュニケーションの姿勢は、ダイバーシティを実現する前提条件になっていると思います。

佐藤:生産設備や作り方のマニュアルは日本のものを活用し、現地での進め方や任せ方といったソフト面を、2wayコミュニケーションで補っていくんですね。

光松:2wayコミュニケーションやウェルカムな姿勢など、石川さんご自身がダイバーシティな考え方を持てたのには、どのような要因がありますか?

石川:父親の仕事の関係で16歳のときに、アメリカのメーン州に住んだことが要因です。そこは、アジアン系やヒスパニック系はもちろんアフリカン系もほとんどおらず 、ヨーロピアン系の方たちがメインのエリアだったので当然、高校もローカルの学校しかありません。

ですが、英語が話せない私に対して、学校や地域のみなさんが、どのようなサポートを私にしてあげたらいいかと考えて支えてくれたんです。どんどん話しかけてくれますし、授業が終われば遊びに誘ってくれました。

そのとき、「外国人というステレオタイプな見方をするのではなく、1人の人間としてみんなが当たり前に接してくれるから居心地がいいのだ、と感じました。そうした風土が私の組織にも根付いてほしい。そうすればコシさんとマージョリーさんの持っている能力は最大限発揮され、彼らの能力を見て日本人メンバーもがんばろうと励まされるでしょう。

次の100年に向けて、社内のダイバーシティをどのように推進しているのか?

佐藤:ダイバーシティを実現するために、どのような教育が行われていますか?

石川:従業員に提供する教育も少しずつ変わってきています。今までは、品質管理の方法や仕事の進め方など、“ルールを守るための教育”を中心に人材育成をしてきました 。一方、環境変化に沿わずに同じルールを適用し続けることによる逆効果もあるはずなので、これから私たちに必要なのは、より本質的な議論ができるようになることです。

そこで近年、具体的に取り組んでいるのが認知力を高める教育です。一定以上の認知力を持つことができれば、多様な考え方ややり方を受け入れることができますね。

「そういう背景なら、こうした意見がが出てくるのは当然だよね」と、目の前の人や事象を受け入れられます。環境の変化とそこから起こりうる問題も受け止めて、社内で議題が生まれることも受容できるでしょう。

笠原:教育体系を見直し、認知力を高めるプログラムを管理職も含め、月1回ほどのグループワークを4カ月にわたり実施しています。チームや部署の課題を突き止め、解決策を提案するところまで考え抜いてもらいます。

これまでの教育研修では 、工場の建て替えで費用をかけることと収益をあげることのどちらかを取るといったトレードオフの考え方に対して、判断できるようになることを目的にした考え方がベースにありました。認知力向上研修ではまず、課題を整理してどこに本質的な問題があるかを考えます。

見つかった問題への対処は、最初から手段を選ぶための議論をするのではなく、議論を通じて矛盾や2つの相反することのバランスをどのように取るかなどをチームで考えることが重要です。そのための能力開発です。

光松:認知力向上研修をはじめてから、どのような変化がありますか?

笠原:発言や行動が明らかに変わった社員が現れていて、とてもうれしいなと思います。 たとえば、自分の中に閉じてしまうタイプの社員。プログラムを受講してもらった後半あたりから、自分の意見ははっきりと言いつつも相手の意見も否定しない。相手の考え方を受け入れつつ、議論を誘導できるようになりました。研修後にリーダー職へ就いてもらった者もいますが、課員のメンバーの話を一生懸命聞きながら進めてくれています。研修を通じてあるべき姿に変化してくれる方が実際にいてうれしいです。

石川:面白かった事例が一つあります。コシさんが入社してくれたときには、日本語で自己紹介した社員がほとんどでした。その後、インドネシア出身のインターンシップ生とマージョリーさんが入社した時には、日本人の中にも英語で自己紹介する人が増えましたさまざまな変化を通じてみんなが気づき考えるから、行動が変わったのだと感じます。

ソミックグループにおけるダイバーシティ、グローバル人材2人の視点から

PCには翻訳アプリケーションが搭載され、日本語の会話もタイムリーに英文化される

佐藤:入社してから、ソミックグループのインクルーシブを体感したことはありますか?

マージョリー:私は、日本語をあまり話せない状態でこの会社に入ったため、周りの人とコミュニケーションできるか、孤独や不安を感じるのではないかと心配していました。

ソミックグループでは社員のみなさんが暖かく声をかけ、いろんな所でサポートしてくれてウェルカムな雰囲気なのでありがたく思っています。私自身も日本語の勉強や、日本語でコミュニケーションを取る努力をしています。その私の姿を見て、日本人の方も英語を使ってコミュニケーションを取ってくれるといった関係性ができています。

コシ:テクノロジーが発達しているので、言語は大きな問題ではありません。もっとも重要なことは、人材活躍の全体におけるサポートシステムの形成です。サポートシステムで最初に必要なのが、全員が協力し挑戦しあえるマインドセットをかけることだと思います。どうすれば双方にとってより良い仕事になるかを考え、お互いが行動や関わり方を変えていくマインドセットを持てるとよいと思っています。

このもっとも難しい最初の壁を超えてしまえば、共通の価値観ができて仕事がスムーズに進みます。多くの日本の会社は、ダイバーシティというと外国人を雇用することが目的となっている気がします。それはダイバーシティへの一歩であって、全体ではないということを、ソミックグループで働いていると強く感じます。

参考:ソミックグループにおけるダイバーシティの取り組み

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Startup Weekend 浜松
第12回 Startup Weekend 浜松 Global
第12回 Startup Weekend 浜松 Global2022-11-18(金)17:00 - 2022-11-20(日)18:30 .w-100p{ width:100%!important; } .d-block{ display:block!important; } @media screen and (min-width:768...

聞き手・文・写真

佐藤芹菜|
名古屋外国語大学 現代国際学部4年。
10thのSWHに初めて参加し、12thSWHのオーガナイザーとして活動中。

光松凌平|
静岡大学 情報学部4年。
10thのSWHに初参加以来、イベントの運営に参画。

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