今回のインタビューでは、「Border-free Japan」をテーマに株式会社ソミックトランスフォーメーション 代表取締役の石川彰吾さんにお話を聞いています。
前編では、ソミックグループが100年の歴史を歩む中で欠かせなかったダイバーシティ(多様性)のあり方についてインタビューしてきました。
後編では、ソミックグループがこの先の100年間を創るためにチャレンジしている新規事業の取り組みと、外国人材の活躍について伺います。
▼前編はこちら
外国人材とともに進める新規事業開発
光松:ここ最近、新規事業領域での外国人登用を進めていらっしゃると思います。その背景について教えてください。
石川:新規事業を開拓するためにベストな方法を考えた結果、外国人のみなさんを仲間に迎えるという結論に至りました。外国人のみなさんは、生まれ育った国も異なれば文化的背景、仕事の進め方も異なります。これらの相違点が新規事業開発を加速できると考えたのです。決して、外国人だから採用を進めているということではなく、さまざまな地域・バックグラウンドの人材をお迎えしているのですよ。
佐藤:組織としてありたい姿はどのようなものですか?
石川:目標は、国籍やジェンダーといった言葉が話に出てこないくらい、ダイバーシティが当たり前になっている組織ですね。1対1の人間同士の関係の中で互いが尊重・応援しあっていて、同じゴールを目指せる会社=人間的企業を創っていきたいと思っています。
佐藤:笠原さんの考える、ソミックグループにおけるダイバーシティ&インクルージョンについても教えてください。
笠原:人数などの目標を掲げて女性や外国人材の採用を進めるのではなく、国籍は関係なしに共通のゴールに向かって一緒にやれる仲間を増やしていきたいです。「浜松市の出身なんですね」「私は磐田市の出身です」と言うのと同じ感覚で、「出身がフィリピンなんですね、ようこそソミックグループへ」といった会話ができるといいですね。
石川:一人ひとりが生まれ育った背景があるだけなので、国籍を気にするのは意味がありませんからね。
佐藤:実際に外国人のコシさんとマジョリーさんを仲間に迎えて、社内でどんな変化がありましたか?
石川:2人が入社してくれたことで変化に対するマインドセットをメンバーが持てました。私を含めたメンバー全員が、自分がマイノリティになるかもしれないと気づく経験になりました。
私は自分の組織の中で、「コシさんやマージョリーさんが、日本に来てチャレンジしていることは素晴らしいよね」とメンバーに話しかけます。同時に「彼らの挑戦を受け入れサポートしてくれるみんなも素晴らしいよね」ということも伝えています。そうするうちに徐々に「新しいコト」へ挑戦する気持ちがチームに育ってきた気がします。
光松:ソミックグループが目指す「新しいコト」の定義はなんですか?
石川:ボールジョイントやシートダンパーなど 既存の主力ビジネスにおける技術革新も、その他の新たなビジネス領域の開拓も、次なる100年を作るための新しい取り組みすべてですね。自動車メーカーさまとともに切り拓いてきた自動車業界の次の100年を達成するため。そして、ソミックグループだからこそ貢献できる新しい領域を見つけるため。
第一に既存のビジネスは、ボールジョイントやシートダンパー製造の生産性を高めることと、既存の技術を新規事業に生かす方向性の2軸を考えています。
光松:既存事業の生産性を高める具体策について教えていただけますか?
石川:「がんばり方」を変えよう、と社内で議論を重ねています。以前は、「働き方改革」の必要性が叫ばれましたが、そもそもみんな一生懸命に働いているので、働き方自体はかんたんに変えられません。
進化しているデジタルテクノロジーに生産の一部を担ってもらいながら、私たち社員は人間だからこそ価値を発揮できる仕事をがんばる方向へ舵を切りはじめたところです。
100年の歴史を次の100年に繋ぐ
石川:第二に、自動車分野における新規事業にも取り組みます。私たちはお陰さまで自動車メーカさまとの繋がりが強く、これまでの100年間苦楽をともにしてきました。EV化や自動運転など、自動車業界がおかれている環境は大きく変わっています。
これからも自動車業界みなさまのパートナーとして、自動車分野でも「新しいコト」をできたらと思っています。
光松:なるほど。新規事業といっても、原点に立ち戻り100年前と同じことをまたやろうという意思があるのですね。
石川:はい。さいごに、自動車以外のまったく新しい領域でも新規事業に取り組んでいるところです。私たちの事業は、社会の動きやご縁に合わせてボルトナットからボールジョイントへと変化させてきました。これは、誰かの役に立てたり、私たちの価値が示せるところがあれば挑戦していくという意思でもあります。
光松:「誰かの役に立つ」という点について詳しく教えてください。
石川:今日、テクノロジーの発達や新型コロナウイルスの流行によって、世の中が大きく変わりました。モノの不足していた時代には、モノを作ることで社会課題を解決してきました。
しかし、たとえばデジタル化に追いつけない人がいるように、技術が発達すればするほど社会に取り残されてしまう人も出てきます。そうした少数の人たちが抱えている課題にも目を向けて、新たな商品・サービスづくりに挑戦することで社会をより良くできると思っています。
ソミックグループの存在意義=パーパスをはっきりさせる
光松:組織として一丸となるには、一筋縄ではいかないことも多いと思います。会社という組織が「新しいコト」に取り組む上で、必要なことは何ですか?
石川:「新しいコト」に取り組む上では、大義名分が重要になります。長年、事業を育む中で、ソミックグループには「ボールジョイントメーカー」のタグが付きました。ありがたいことである一方、次の100年を創るにはこのタグを更新していく必要もあります。その過程で「ボールジョイントのメーカーが、なぜ『新しいコト』をするのか」という議論が必ず巻き起こります。
そこで、自分たちの存在意義を明確にすることが重要になるのです。私たちは今年の4月に、パーパスとアイデンティティを設定しました。
パーパスは、「次世代へ笑顔を繋ぐ」。そして、「製造業を変革し、創造する」がアイデンティティです。このように自分たちを再定義しました。先人たちが培ってきた過去を忘れず、「新しいコト」に挑む目的を考え抜くことが求められますね。
光松:プレリリースを拝見していても、他社とのコラボレーションによる新規事業がたくさん形になっていらっしゃるので、驚きました。
石川:ソミックの名前の由来は、「創造(SO-uzou)」・未来「(MI-rai)」・挑戦「(C-hallenge)」。新規事業開発を通じて社会課題に取り組むことが、「ソミック」を実現し、いい会社・社会に繋がるかと。そういった意味では、ソミックソサエティとでもいうべき風土が作れたら嬉しいですね。
光松:そうだったんですね。誰も取り残さず、豊かな社会づくりに取り組む姿勢は、SDGsにも繋がりますね。業界の中でも実践が早いのでは?
石川:業界の中で早いかどうかは、わからないです。ただ、私たちが必死に次の100年を作ろうとしていることだけは、事実です。
光松:必死……それくらいの危機感を持っていらっしゃるのでしょうか。
石川:持っています。危機感の要因の1つは、自動車業界における100年に1度の大変革でした。しかしながら、それはもう7、8年前から叫ばれてきたことです。それよりも、コロナ渦で人々の生活様式が変わったことの方が大きな危機感に繋がっています。ただし、作りたい世界観と大義名分をしっかりと持てたので、今私たちが抱いているのは健全な危機感だと思います。
地域の企業がStartup Weekend 浜松に参加する意義とは?
佐藤:第2回ではソミック石川さんにも協賛をいただいたStartup Weekend 浜松。ついに第12回が11月18日から開催されます。石川さんがStartup Weekend 浜松に参加されていかがでしたか?
石川:自社を飛び出して「戦略的バカ」になれる場所だと思いました。よく聞きませんか?新しいコトを創り出すのは、「よそ者・若者・バカ者」だと。よそ者と若者にはなれなくても、バカ者には誰もがなれますよね。
佐藤:確かに。コシさんとマージョリーさんもそれぞれ、インドネシアとフィリピンという箱を出ています。どのような変化がありましたか?
コシさん:箱を出たことで、自分の可能性を狭めるリミットを外すことができました。いろんな失敗もしますけれど、それは経験にしてどんどん前に進んでいくことが大切だと思います。
マージョリーさん:私がソミックグループに就職した理由は2つ。大きなミッションを掲げていたことと、それにチャレンジできる環境があったことでした。箱を出ることで、こうした会社と出会うことができます。
とはいえ、私たちのチャレンジは1つの手段を実施すればたどり着けるものではありません。だからこそ、私たちは挑戦していくのです。そのとき、失敗を許容し、チャレンジしあう人同士を認め合える環境がとても大切だと思います。
佐藤:最後に、地域の企業が本イベントに参加する意義について教えていただきたいです。
石川:ぜひ、いい意味でカッコつけず、戦略的にバカになってみてください(笑)。そんな風に自分を楽しんでもらえると、創造的でチャレンジングなめちゃくちゃいい空気になるんでしょうね。ぜひ、楽しみましょう!
最後に
アイデアをビジネスにするための方法論を学び、起業をリアルに体感できるStartup Weekend。浜松では、ベンチャーから地域の企業、学生まで、毎回さまざまな参加者がチャレンジしています。ダイバーシティ&インクルージョンに興味をもっている、起業やアクションのきっかけがほしい、様々な年代や立場の人と話したいと考えている、そういった方々はぜひSWHに参加してみてはいかがでしょうか?
イベント概要
日時:2022年11月18日(金)16:30 ~ 2022年11月20日(日)18:30
会場:Co-startup Space & Community FUSE(静岡県浜松市中区鍛冶町100-1 ザザシティ浜松中央館 B1F)
▼詳細・お申込みは下記サイトより
▼合わせて読みたい
聞き手・文・写真
佐藤芹菜|
名古屋外国語大学 現代国際学部4年。
10thのSWHに初めて参加し、12thSWHのオーガナイザーとして活動中。
光松凌平|
静岡大学 情報学部4年。
10thのSWHに初参加以来、イベントの運営に参画。