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中小企業の経営革新に寄り添う基幹系システムを |一般社団法人システムコラボ・マネジメント 田中 宏和 氏へインタビュー


浜松の製造業を縁の下で支えてきた、中小企業群。近年、その事業所や従業者の数が減少を続けています。中小企業の再興のためには、全社的な経営革新が必要ですが、組織を円滑に変えていくためには、相当の戦略と努力が必要です。
そんな中、中小企業の業務改善に取り組む法人があります。それが、一般社団法人システムコラボ・マネジメント(本社:浜松市中区)。基幹系システムの構築・導入を通じ、経営陣から従業員までPDCAを回せる組織体を実現しています。業務の役割分担もあいまいなことが多い中小企業で、なぜ、そのような組織作りが可能なのでしょうか。田中理事長にお話を伺いました。
資料)中小企業の現状‐浜松市 浜松市 はままつ産業イノベーション構想

目次

田中 宏和 氏|プロフィール

1983年東京工業大学大学院経営工学専攻修了。1983年三菱化成工業株式会社(現:三菱ケミカル株式会社)入社、システムエンジニアとして5年間勤務。1988年三井銀行(現:三井住友銀行)入行、人事制度のコンサルティングに従事する。1992年東京工業大学にて経営工学の分野を修め、工学博士を取得。1997年神奈川工科大学情報工学科へ赴任し、経営情報の教鞭を執る。2008年には静岡大学情報学部に転籍。PBL(project-based learning、課題解決型学習)をベースとした、ゼロからプログラミングを習得できるプログラムを展開。2012年4月、一般社団法人システムコラボ・マネジメント(通称、シスコラ)を設立、理事長に就任。

基幹系システムの構築を通じて、ともに経営課題と向き合う


菅原:静岡大学発のベンチャーである貴社では、どのような事業を展開しているのですか?
田中:従業員数が20~50名の中小企業さまを対象とした、経営コンサルティングおよび基幹系システムの構築です。
菅原:その規模の中小企業へ、ソリューションを提供している理由はなんでしょうか?
田中:中小企業のIT対応をサポートし、浜松の産業集積地としての機能を保持していくことです。中小企業の中でも、産業のベースを支えているのは、多品種小ロット生産に対応している小規模な事業所です。近年、そうした企業への、基幹系システムの導入が遅れていることが課題となっています。

菅原:基幹系システムの導入は、中小企業のどのような課題を解消するために必要なのでしょうか?
田中:製造業では、規模に関わらず、受注から生産、納品まで、多岐にわたる業務があります。中小企業では、それらの企業活動が、属人的な仕事のスタイルで行われていたり、情報の共有が不十分なために業務間の連携が効率的に行われていない点が課題です。
菅原:「誰々さんに聞かないと分からない」とか、別の部門ではどのような仕事が行われているのか分からない、といったことですね。
田中:そうなると、効率が悪くなり、少人数の製造現場は納期に追われて常にドタバタする”戦場”となってしまうのです。そこで、部署を横断した基幹系システムの導入が不可欠となります。工程を“見える化”して「業務の効率化」と「生産管理の合理化」を図ります。
菅原:そこまで重要な基幹系システム導入が遅れているのには、どのような背景があるのでしょうか?
田中:滞りなく現業をまわしながら、システムを導入するのがとても難しいということが言えます。例えば、東京駅の工事。ずいぶん時間がかかっていると思いませんか?
菅原:完成までだいぶ時間がかかった印象がありますね。
田中:それは、乗降客の安全と導線に配慮しつつ、電車のダイヤを厳守しながら工事を進めていくからなんですね。製造業における基幹系システムの導入にも同じことが言えます。つまり、製造ラインを止めずに導入を進めなくてはいけないということです。
菅原:ゆるやかに開発していくことがポイントなのでしょうか。
田中:基幹系システムの導入は、人工臓器の移植と似ているんです。個体差や体力を考慮せず、いきなり丸ごと入れ替えようとすると拒絶反応が出てしまいます。ERPと称する基幹系のパッケージシステムが、中小企業の実情にマッチしない理由はそこにあります。
そこで、弊社では、「アジャイル開発」の手法を採用したシステム開発を進めています。組織診断を行い、お客さまの実態に合わせて、少しずつ着実にシステムを導入する開発スタイルです。

カンと経験に基づく現場本位から、データに基づく経営へ革新する


菅原:一般的なシステム開発は「ウォーターフォール」型だと思いますが。
田中:プロジェクトの完了日が決定しており、そこに至るまで緻密な計画を立てて開発する手法ですね。開発は、システムエンジニアとプログラマーが分業して行うのでロスが生じやすいでしょう。クライアクトが関わるのは最初の段階だけですし、途中変更は多大な影響が出るためなるべく避けようとします。これでは、企業ごとの実情に合わせたシステムを開発することはできません。
菅原:一方の「アジャイル開発」には、どのようなメリットがあるでしょうか。
田中:「アジャイル開発」というのは、クライアントも開発過程に参画し、チーム一丸となってシステムを開発していく手法です。クライアントの要望を聞きながら、“小さな単位”で設計と実装を繰り返して開発を進めていきます。多少時間はかかりますが、着実に動く、使えるシステムが出来上がっていきます。
菅原:“小さな単位”で実装とテストを繰り返すのですね。
田中:「本当に住みたい家を知るためには、3回住み替えなさい」と、聞きませんか?システムも同じで、使ってみないと分からないことがたくさんありますから。担当者さまに実際に使っていただくと、具体的な要望が出てきます。それを反映して、現場が使いやすいシステムにしていきます。
菅原:クライアントと貴社が協力して、経営課題に取り組むイメージですね。
田中:ゆるやかに現場に受け入れられながら、システムを構築していくことが肝要です。基幹系システム導入のゴールは、蓄積したデータをもとに経営改善を行うことなので。企業さまの実情にフィットしたものとなっていき、導入もスムーズに進められるようになります。
菅原:データをもとにした改善活動について、具体的に教えてください。
田中:例えば、不良率をゼロにすることは、製造業者の究極の目標でしょう。そのとき、まずしなければならないのは、現状把握です。1カ月間の製造報告のデータを集計し、どの製品、どの工程で不良が多いのを分析すれば、改善活動のターゲットが見えてきます。すると、不良率削減の数値目標を立てた改善活動が可能になりますし、その成果をデータで検証できるようになります。
菅原:そこまで合理的にPDCAサイクルが回せると、経営の推進力が増しますね。
田中:経営者が全体を把握し、あるべき姿(ゴール)とのギャップを埋めていくことが、経営の核心です。そのためには全社のデータを繋ぐ基幹系システムが必要だということです。アジャイル開発をもちいて、ひとつひとつシステムを組み込んでいく。そうすると、現場も中間もトップも、社内の全員がPDCAサイクルをまわして行く組織を作り上げることができるんです。
菅原:そのようなシステムを構築・導入してくれる会社というのは、中々ありませんね。
田中:それが、弊社の強みでもあります。私は、プログラミングと経営コンサルティングの両方とも、実務経験を積みました。特に、銀行で携わった人事コンサルでは、中小企業の問題点を目の当たりにしました。そんな私にこそ、果たすべきミッションだと思って取り組んでいます。
菅原:開発コストはどれほどでしょうか?
田中:基幹系システムの開発は相場の約半分程度とお考えいただければと。経営者さまとの十分な話し合いを行い、システム化構想とそのおおよそのイメージができあがってから契約します。まずは、どのようなことができるか、お気軽にご相談いただけたらと思います。
参照)無料IT化システムのご案内

シスコラの知財、ゼロからでも短期習得できるプログラミングとは?


菅原:アジャイル開発を成功させるために、工夫していることはありますか?
田中:弊社では、経営分析からシステム設計、実装まで一人で一貫してすべて行うことのできる「ITプロモーター」の採用と育成に注力しています。モノ作りに例えると、“セル生産方式”を採用していることになりますね。弊社のシステム開発コストが安いのはそれが理由です。
菅原:経営分析とシステム開発の両方ができる人材育成を、どう実現しているのですか?
田中:専門的な知識とスキルが求められる各分野に精通した人材育成は、果たして可能なのかと疑問をもたれると思います。コンサルに関しては、OJTで私や他のITプロモーターが指導しています。ITプロモーターの数が増えてきたら、マネージャーを置いて教育を組織化する予定です。
また、プログラミングは、標準化を徹底的に行うことと、処理に応じてパターン化しています。それらをトレーニング教材に作り上げ、誰でも短期間で基幹系システムの開発できるようになりました。教材の一部は、近隣の情報系専門学校のプログラミング教材にもなっており、弊社が講師派遣を行っています。
菅原:短期間で習得できる秘訣は、一体なんでしょうか?
田中:私が、10年前から大学教育に採り入れてきた「PBL(project-based learning、課題解決型学習)」の成果でしょうか。PBLとは、学習者が自ら問題を発見し、その問題を解決するためにさまざまな努力をする過程で、経験や知識を得ていくという学習方法です。
菅原:例えば、どのようなプログラムを実施していますか?
田中:私のゼミでは、学生はまず、プログラミングの基礎的なトレーニングを受けてもらいます。その後、4年生になると卒業研究として、浜松地域の町工場を対象として基幹系システムの開発を行います。
菅原:実際のプロジェクトにおけるPBLは、どのように進んできますか?
田中:システム開発の前に業務実習を通じて、企業の業務の流れをひととおり体験することから始めます。そして、業務の問題は何か、どこを改善すれば良いのかを学生自身で考えて経営者に提案させています。
菅原:素晴らしい体験学習の機会ですね。
田中:システム開発はそれ自体が目的ではなく、業務改善の手段です。これを学生に伝えたいと思っています。会社という組織は、感情や意志をもった人の集まりです。合理的で正しい答えがまっとうに受け入れられるはずがありません。このことも体験として学んでほしいので、PBLの手法を採用しています。

浜松の中小企業に寄り添う―経営課題を解決できるシステム会社として、プレゼンスを高めるために


菅原:これまで、貴社では、首都圏のプロジェクトが多かったようですね。今後、浜松での事業展開もお考えですか?
田中:これまで、東京都大田区などにクライアントが多かったのですが、今後は、浜松に根差した企業になっていきたいです。9月には株式会社化し、体制と営業を強化していきます。ピッチイベントやビジネスマッチングなど、地元企業さまと触れる機会にも、積極的に参加していきます。弊社の理念や実績を、広くお伝えしたいと思っています。
菅原:浜松での営業を強化するにあたり、人員も増やしていかれますか?
田中:ITプロモーターを増員したいですね。主婦の方の採用も考えています。在宅で、子育てや家事の合間にしていただくような。
菅原:働き方改革にも通じますね。
田中:システム開発を「パソコンさえあれば、誰でも・どこでもできる仕事に」したいと思ってきました。スカイプやDropBoxも活用し、ミーティングを必要最低限にする工夫もしています。
菅原:浜松での導入事例もお聞きしたいです。
田中:ある切削加工の企業さまでの仕事が印象的です。社長には、話を差し上げた当初から「絶対、無理ですよ」と言われていました。これまで、生産管理システムを散々入れてきたのですが、うまくいかなかったそうで。ですが、次期社長となる息子さんには、会社をどうしていきたいかという明確なビジョンがありました。3年かけて、現場との対話を重ね、ビジョンを形にできるシステムを構築していきました。今では、とても満足いく状態で、システムを使っていただいています。
菅原:最後に、経営課題の改善に悩んでいる浜松の中小企業さまへ、メッセージをお願いします。
田中:浜松地域はこれから経営者の世代交代が進んでいきます。不透明な時代にはデータにもとづく合理的なマネジメントが求められていますし、若手の経営者はそれを担える力量があると思っています。
ただし、合理的なマネジメントを行うには基幹系システムの導入が不可欠です。行動を起さなければ現状は何も変わりません。そのお手伝いをしていきたいと考えています。

編集部コメント|

業績が伸び悩んでいるときは、経営革新のチャンスと言えるのかもしれません。どこかに必ず原因があり、打開策を見出すことができるということを、田中氏は教えてくれました。もし、基幹系システムの導入がまだ、もしくは課題を感じていらっしゃる方は、一度シスコラにお問い合わせを。

ライター|菅原 岬

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