MENU

くらしを変える働き方改革プロジェクト“テレワーク・デイズ浜松2018”が開催されました


2018年7月23日(月)から7月27日(金)にかけて、全国で「テレワーク・デイズ」が実施されました。テレワーク・デイズとは、働き方改革の国民運動。総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、内閣官房、内閣府では、東京都および関係団体が取り組んでいます。
2017年にはじまったこの国民運動。東京オリンピックの開会式にあたる7月24日を「テレワーク・デイ」と位置づけ、テレワークの全国一斉実施を国が呼びかけたところ、約950団体・6.3万人が参加(引用:テレワーク・デイズ公式HPより)。国民の働き方に対する意識改革の後押しとなりました。
静岡県浜松市では、コア日の7月24日(火)に市内3会場で「テレワーク・デイズ浜松」が開催され、浜松市の企業を中心に10数社が参画。本記事ではその様子をレポートします。

目次

テレワーク・デイズ浜松とは

画像|テレワーク・デイズ浜松 公式ホームページより引用


テレワーク・デイズ浜松とは、浜松を中心とした企業が働き方改革の一つ「テレワーク」について考え、トライアルし、取り組んでいくきっかけを作るための広報活動。会場は、市内にあるコワーキングスペースのAny – エニイ – (本社:浜松市中区)、Dexi(本社:浜松市東区)、そして浜松城公園に開設されたキャンピングオフィスです。
発起人である株式会社NOKIOO(本社:浜松市東区)は、2011年の創業以来「ノキオ・スタイル」という新しい働き方への取り組みを推進。テレワークやサテライトオフィスなどを取り入れ、社員間のコミュニケーションを深めるための施策や風土づくりを実施してきました。
今回の「テレワーク・デイズ浜松」は、全国で行われるテレワーク・デイズの浜松版として展開されました。

テレワークはあくまでも1つの手段、その先に見据えた企業の未来とは

株式会社NOKIOOの小川代表、浜松城公園に開設されたキャンピングオフィスより

―今回、テレワーク・デイズの浜松版を企画した経緯を教えてください。
小川:
東京でテレワーク・デイズという企画が始まって、浜松に持ってこないのはもったいないと感じ、浜松版を企画しました。都市部では、テレワークという働き方が珍しくありませんが、浜松でも十分にその効果を発揮できると思います。テレワークが浜松で一般的になれば、浜松はもちろん、周辺地域からも優秀な人材が集まるので、採用面でのメリットも考えられます。
―テレワークなら、子育てや介護をしながら自宅で働けるので、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が可能です。NOKIOOでも、そのような働き方をする社員はいるのでしょうか。
小川:
弊社は、創業時から「ノキオ・スタイル」と呼びながら、新しい働き方や組織の在り方に挑戦してきました。求人応募してくる人に動機を尋ねると、やはりそういう働き方の中で、自分の力を発揮したいという人が多いなという感覚があります。
最近、事情により九州に引っ越しせざるを得ないという社員がいました。従来の働き方であれば、そのまま退職することになりますよね。NOKIOOでは、その社員にテレワークで引き続き働いてもらえることになりました。
テレワークはあくまでも働き方改革の1つの手段であって、全ての会社が適しているとは言えません。しかし、「働き方改革」は、どの会社にも重要なキーワードです。その議論を起こしていくための分かりやすい手段として、テレワークを議論の土台に乗せる、浜松にムーブメントを作っていけると確信しています。

テレビや新聞社などメディア取材があり、その注目度がうかがえる


―テレワーク・デイズ浜松では、試験的にテレワークを導入された企業も参加されています。実際の様子を見ていかがでしょうか。
小川:
オンラインミーティングをしているときに、音声やビデオ上の問題が発生した企業があったそうです。このように、実際にトライしてみて初めて、足りないものが見えてきたようです。
いざ、テレワークを導入しようとしても、いきなり完成形はできません。
こういった機会をうまく利用することで、自社に取り入れてみた場合のシミュレーションができて、自社だけでは得られない気づきを持ち帰ってもらえると思いました。
―テレワーク・デイズ浜松の今後の展開を教えてください。
小川:
私たちは、これを一過性のイベントとは考えていません。次回は秋に開催予定で、年に複数回やっていきたいと考えています。東京では、テレワークをサポートする企業もあって。例えば、必要なツールやノウハウ、インフラを提供するものです。
そういった企業も巻き込みながら、今後は、さらなるコンテンツと参加する企業を増やして、みんなで浜松の新しいテレワークを展開していけたらと考えています。テレワークの導入や社員の働き方改革について、いろいろヒントが欲しいと感じている企業さんは、ぜひ声をかけていただきたいです。
株式会社NOKIOOの過去記事はこちらから

初めての試みで得られた手応えと今後への期待

浜松駅から徒歩3分という好立地のコワーキングスペースAnyは、地元の企業が出資した、民間のまちづくり会社が運営。多様な人や団体によるイベントやセミナーなどが毎日のように開催され、まちのコミュニティースペースとしても注目を集めています。
テレワークデイズ浜松では、会場の1つとして参画。その経緯と今後の展開について、Anyの職員の方に話をうかがいました。

(左)伊藤氏、(右)安倍氏

―今回、テレワーク・デイズ浜松に参画した経緯を教えてください。
伊藤:
NOKIOOの小川代表から「テレワーク先として、コワーキングスペースを持つDexiさんとAnyさんを繋げていこうという構想がある」とお声がけいただきました。Dexiさんとは、以前から何か一緒に企画できたらいいですねと話をしていて。これはよい機会だと思い、「ぜひ協力させてください」と参画しました。
―Anyの利用者層の特徴を教えてください。
伊藤:
Anyの月額会員は小規模事業者さんやフリーランスさんがほとんどです。一部の企業さんには、法人プランをご採用いただき、営業所のような形で使っていただいていていますが、企業のテレワーク先としての利用にはまだ至っておりません。

―テレワーク・デイズ浜松をきっかけに、法人プランの利用が増えそうですね。
伊藤:
7月上旬に企画をいただいたときは、賛同してくださる企業さんがどのくらいいらっしゃるのか疑問で、不安でもありましたね。
しかし今回は、浜松市を中心に10数社の企業さんがテレワークにチャレンジしてくださいました。働き方改革の手段の1つとして、「テレワーク」を考える企業さんが一定数いらっしゃるのだと、手応えを感じましたね。
―Anyの職員の方も実際に各会場を回られたということですが、感想を教えてください。
安倍:
ただ場所を変えるだけで、働く意識も変わるのだなと思いました。浜松城公園のキャンピングオフィスでは、外ならではの開放感が味わえるので、普段とは違ったミーティングができそうだと感じました。ちょっと外でやってみるだけでも普段とは違うアイデアも出て、仕事の効率も上がると思います。
街中の企業さんなら、郊外にあるコワーキングスペースをサテライトオフィスとして使ってもらえれば、営業効率や時間効率を上げることに有効です。逆に郊外の企業さんは、新幹線などでの出張帰りに、街中のコワーキングスペースで仕事を終わらせて自宅へ帰るという使い方も考えられますよね。

テレワークデイズ浜松では、DexiとAnyがオンラインで1日繋がっていた

―これをきっかけに、今回は気になりつつも参加できなかった企業さんが、次回に向けて準備できるような流れになるといいですよね。
伊藤:
私たち自身も、今までDexiさんと一緒に何かできるといいよねと話がありつつも、なかなかきっかけがつかめずにいました。今回のような企画がハブになり、まちなかと郊外型のコワーキングスペースで一緒に仕掛けていければと考えています。
私たちがこのイベントをきっかけに、新しいことにトライできたように、浜松市の企業さんも社員の働き方について考えトライできる機会です。ぜひ、継続的に実施して、より多くの企業さんに実感してもらえたらと思います。

多様な働き方を、浜松エリアでコーディネート

Dexiは、株式会社エージェンシースギタが運営する、郊外型のシェアオフィス・コワーキングスペース。近年、浜松市外の利用者も増加しており、法人向けの利用サービスを開始しました。浜松市に首都圏の企業が進出する際、サテライトオフィスとしての機能も期待されます。
そんなDexiの今後の展望について、代表の杉田氏に話を伺いました。

株式会社エージェンシースギタ(Dexi)の杉田代表

―Dexiは郊外にあり、駐車場も完備されています。例えば、駅前に会社があって、客先が郊外なら、Dexiを拠点とした働き方も可能ですよね。
杉田:
車で郊外へ営業しに行き、帰社せず、Dexiでテレワークして帰宅すれば、時間効率の良い仕事ができますね。
テレワークは、企業と社員がお互いを信用し、ルールを決めて成り立つ働き方です。企業として、自宅での勤務はまだ認められないけど、コワーキングスペースなら業務時間として認められるとする。そうなれば、外回りの営業職の方が効率よく働けるひとつの選択肢になると考えています。
―企業がコワーキングスペースを利用する流れは加速していきそうですね。
杉田:
Yahoo! JAPANのオフィス内にあるコワーキングスペース「LODGE」など、今は企業がコワーキングスペースを持つ時代です。ヤマハ、スズキ、ホンダ、浜松ホトニクスなどの浜松を代表する大企業であれば、自分たちの交流スペースを作るだけで、多様な人が集まることができます。
そして、そこで集まった人たちから、何かイノベーションが起こるという期待ができます。ですが、中小企業ではそこまでの多様性を持たせることができません。そこで企業がコワーキングスペースをサテライトオフィスとして利用するというのはイノベーションを起こすいい方法だと思うんです。そう考える企業が増えてくれたら嬉しいですね。

―確かに、コワーキングスペースは、普段出会うことのない人と仕事の話ができ、自社以外の業界の流れや働き方など、新しい刺激をもらうことができます。
杉田:ここにはさまざまなプロフェッショナルが集まるので、そこでの会話が刺激になり、それを自社に持ち帰って話が膨らむ。企業がテレワークでコワーキングスペースを使う醍醐味は、そこだと考えます。
―テレワークの拡大や浸透に向けて、今後はどのような展開をしていくのでしょうか。
杉田:
浜松駅前にあるAnyさん、天竜区にある「Kissa&Dining 山ノ舎」さんと、何か一緒にできたらと考えていて。山ノ舎さんの1階部分は喫茶店で、2階部分はシェアスペースとして利用できます。
駅前とDexiのような郊外型、さらに山と繋がれば、利用者の選択肢も増えます。あとは、海と湖があれば、浜松の魅力的な場所を押さえたなと。その場所で、私たちのような可能性を信じている人と、何か一緒に仕掛けていけたら、浜松はますます面白くなると考えています。

―テレワークに興味がありつつも、今までの会社としての働き方があるので、すぐに導入するというのは難しいのではないでしょうか。
杉田:
組織が大きくなればなるほど、新しいことを直ぐに取り入れることは難しい。今回、興味がありつつも、社内で環境が整わず参加できなかった企業もあるかと思います。環境が整っているDexiのようなコワーキングスペースを試しに使ってみるのも、テレワーク導入の前段階として有用だと考えています。
―テレワーク導入には、具体的にどんなことが必要でしょうか。
杉田:
まず、やってみる。セキュリティ面や仕事の進捗確認、人事評価など、さまざまな課題が見えてくるでしょう。それは、やってみないと見えてきませんよね。
今後は、これまでの働き方の概念が大きく変わっていくと思います。そのとき、自分の組織に足りないものを知る意味では、まずコワーキングスペースを使ってもらいたいですね。
株式会社エージェンシースギタ(Dexi)の過去記事はこちらから

製造業の老舗企業でテレワークが社員に受け入れられた、その理由とは

浜松市の老舗企業である株式会社ソミック石川(本社:浜松市南区)は、国内トップシェアを誇るボールジョイント・ダンパーのメーカーです。
今回のテレワーク・デイズ浜松では、会社として初めてテレワークにトライ。テレワークを会社に提案したときの反応と、実際に体験して感じた意見を社員の方に伺いました。

経営企画部で働き方改革を推進する石川氏

―テレワークという初の取り組みについて、社内ではどんな反応がありましたか?
石川:
最初は、社員から否定されるのではないかと思っていましたが、そんなことは全くありませんでした。今回参加してくれたのは、ぜひテレワークをやってみたいと、自ら手を上げてくれた社員たちです。
役員についても、テレワーク・デイズ浜松の企画を説明したところ、「そういうことならやってみようじゃないか」と背中を押してくれました。
―テレワークを導入して感じたメリットを教えてください。
石川:
一番のメリットは、通勤時間の削減だと思います。例えば私の場合、会社へ出勤するには、片道車で30分程度、月に換算すると約20時間以上もかかります。今日は、テレワークで浜松城公園までくるのに、その半分の時間で済みました。
これが自宅勤務となると、通勤時間すらかかりませんよね。「通勤時間」は当たり前のものだと思っていましたが、そうではなくなる。こう考えられるようになると、働き方や時間の使い方は大きく変わり、業務の効率化にも繋がるのではないかと思います。

浜松城公園のオフィスキャンプで実施されたオンラインMTGの様子

―では、テレワークのデメリットについてはいかがでしょうか。
石川:
物事のデメリットというのは、それに慣れて使いこなせるようになるまでの課程だと、私は考えています。テレワークに限らず何でも言えることですが、新しいアイデアは、習慣化されるまでの課程で、既存のものと比較されてしまいますよね。
―確かに、新しいものは使いづらく感じますが、習慣化されるとなくてはならない存在になります。実際に、テレワークを導入してみて、社内の感想はいかがでしたか。
石川:
いろいろと不満が出るかなと想定していたのですが、みなさん慣れないこともそれはそれで楽しんでいるのかなという感触でした。
弊社は、Microsoftの「Office 365」を導入して、テレワークでも働ける環境を整えています。ただし、便利なシステムを導入しただけではすぐに変化はなく、使わずにそのままパソコンの中で眠ってしまうことになりかねません。テレワーク・デイズ浜松のようなイベントをきっかけに、より多くの社員に使ってもらえる、そして社内で使用することが当たり前になっていく流れができると考えています。
―今後、テレワークの導入を検討している企業にメッセージをお願いします。
石川:
やはり、新しいアイデアを習慣化にするには、まずトライしてみること。弊社も、試験的にテレワークしてみることで、もっとこういうことがやりたいね、うちではこんなことがやれるよねという具体的な課題が出ると思います。
今までの常識で物事を整理してしまうと、結局何も変えられません。自社の外や業界の外に出てみると、自社での当たり前がそうではないということに気付きます。そのときに、ちゃんとした整合をとれば、自社はもちろん、この浜松という場所も変えていけるようになるかなと思います。弊社は100年に渡りこの地で事業を展開してきたので、そういった形で、何かしらの恩返しをしていきたいですね。
ソミック石川の過去の記事はこちらから

編集部コメント

次回、テレワークデイズ浜松の開催は、秋に予定しています。社員の働き方改革やテレワークに興味のある企業は、参加してみてはいかがでしょうか。今回、はじめてテレワークを実践し、コワーキングスペースと社内を繋げたオンラインMTGにトライする企業も見られました。ここで得た知見を社内に持ち帰り、社員の働き方にどう生かすのか、浜松市内の企業が展開する働き改革にも目が離せません。
▽テレワーク・デイズ浜松のHPはこちらから
https://teleworkdays-hamamatsu.biz/

author

目次
閉じる