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「大切なのは、海と仕事のバランス」株式会社こころ渡辺代表にインタビュー


さわやか、五味八珍、沼津魚がしなどの有名飲食店が多く並ぶ浜松市。そんな浜松市で、創業以来成長し続けている飲食ベンチャー企業が、「外食×IT」の領域で注目されている株式会社こころです。今回はこころ代表の渡辺氏にインタビューをお願いし、事業戦略や浜松で戦い続けている理由をお聞きしました。

渡邉 一博 氏

1975年生まれ、広島県出身。株式会社こころ代表取締役。早稲田大学理工学部卒業後、日本オラクルに7年半勤務。その後独立し、週末起業で共同創業者の佐藤氏とこころの原型となるWEB制作事業を開始し、2007年に開業。外食×ITの領域で浜松の飲食ベンチャーを牽引中。

目次

オラクル・IBM出身の2人で創業

オラクル出身の代表取締役 渡辺氏(左)とIBM出身の取締役副社長 佐藤氏(右)

若目田:まずはじめに、創業までの経緯教えて頂けますか?
渡辺:31歳の時にオラクルを退職して、今の副社長の佐藤と週末起業をしようということで、ホームページの制作やショッピングサイトを作っていました。当時社名は違いましたが、今のこころの原型となるものです。僕はオラクル出身、副社長もIBM出身だったので、「まずはITだよね」と。
その事業を2年ほど続け、そろそろ本格的に事業展開しようと話し合いました。市場規模が大きくて大手企業の専有率も低い、かつどストレートのBtoCでお客さんの笑顔も近い外食産業が事業の候補として挙がったんです。そうして、2007年に外食事業で開業することにしました。

現場重視な飲食業だからこそ、ITによる仕組み化を重視する

若目田:外食×ITということですが、具体的にはどんなことをされているのでしょうか?
渡辺:皆さんが思っている以上に、外食・飲食店のIT化は浸透していないんです。浜松だけで店舗を運営している分には物理的な制約はそんなにないのですが、他都市にお店を出した瞬間に人の管理やお金の流れをリモートに追いかけられるようにしないといけないんですね。
私たちは創業当初から多店舗展開しようと考えていたので、人・モノ・金を管理するにはIT化は必須だと考えていました。外注はせず、初めは自分たちでちょっとした管理システムを自社開発していました。2014年に浜松市内で5店舗まで広めて、その後は静岡市に進出することにしました。
若目田:事業の裏側の部分のIT化に注力しているんですね。
渡辺:そうですね。収益に直接関わる原価と人件費は丁寧にデータを積み重ねるようにしてます。原価は受発注とお店で作るレシピをコントロールすれば、理論と実質の原価がきちんと把握できます。日次の売上げはPOSレジから飛んできて、人件費もシフトを組んでで予算を計算して、勤怠はオンラインで指紋認証などを使います。これらを測れるサービスは世の中にいっぱいあるので、それで実績値をとります。
飲食業界の傾向的には、良いものを仕入れて美味しいものを出そうという、オペレーション寄りの観点で数字を見てしまうんです。僕らは元々飲食はド素人ですし、料亭で出るような料理を作ることはできませんが、その分、飲食業をビジネス側の視点で捉えることができます。どこに注力すればいいのか、どこの数字を追うべきなのか、という基礎を作り、店舗展開を進めることができたのは弊社の強みでもあります。

「海と仕事のバランス」を大切に

若目田:渡辺社長は広島県出身ということでしたが、わざわざ浜松を選んだ理由は何だったのでしょうか?
渡辺:自分の人生を考えたときに2つ大切にしていることがあります。1つは創業者・起業家であること、そしてもう1つが自分のプライベートを充実させることです。趣味でサーフィンをやっていて、海と仕事のバランスを取るために浜松に拠点を構えることを決意したんです。
浜松は海まで車で10分で波のある海へ行けます。昨日も4時半まで仕事をして、夕方5時に海について1ラウンド入っていました。

サーフィンの腕前も中々の渡辺氏

若目田:「海と仕事のバランス」って、いい言葉ですね。
渡辺:飲食の事業をしながら波に乗ることを両立させるという点で考えると、まず、飲食業はある程度人口規模がある場所で成り立ちますよね。事業を始める前に、満員電車の影響を受けない東京・大阪・名古屋以外の都市で、海が近くて人口規模の大きい都市を全国で探したんです。
すると政令指定都市の仙台・福岡、そして浜松に絞ることができます。仙台は海が冷たくて、福岡はコンスタントに波が無い。浜松は、サーファーたちが「本州最後の楽園」と言うくらい、波があって排他的でない最高の場所なんです。サーファー移住者がものすごく多い地域なんですよ。
ビジネス的な視点で浜松を見ると、人口は80万人で、製造業が栄えているので収入も比較的高い。建物の賃料も他の政令指定都市と比べて安い傾向にあります。ここまで条件が揃えば、飲食店の運営が成り立ちそうじゃないですか。自分のプライベートとビジネス的な成功要因を照らし合わせて、最終的に浜松を選んで事業をスタートしました。
一緒に創業した副社長の佐藤もサーファーで、大学で出会ってから毎週末一緒にサーフィンをしに行く仲です。異論はありませんでしたね (笑)
若目田:絵に描いたような素敵なストーリーですね。

ブランド展開と管理プラットフォームの2軸で勝負

こころの管理プラットフォームの一部

若目田:創業10年、最近ではM&Aも進めているこころですが、今後はどのように事業展開をして行くのでしょうか?
渡辺:最近、静岡県内で5~6店舗構えている飲食企業をM&Aしたのですが、この目的は自分たちの店舗以外のブランドを入手するためです。
単純に売上げ高を上乗せさせたいというわけではありません。ブランドの今後の展開を、既に出来上がった事業の中で、自分たちが注力している事業の後ろ側の管理するプラットフォームを使って事業開発をするという狙いがあります。上手く当てはまれば、自社開発するよりも早く展開できます。
飲食店の管理をする上では、自分たちで作ったITの仕組みだけではなくて、外部事業者との連携も結構必要になってくるんですよ。だから、物流部門のことや、店舗のメンテナンスなどを一元的にやるスキームが重要になってきます。例えば、浜松の空調事業者にメンテナンスをお願いしてても、沼津のお店に同様に対応できるかどうかは分かりませんよね。
M&Aだけでは無く、外食事業でブランド開発をして店舗を出して行くこと。それと、先ほど言った事業の後ろ側の管理するプラットフォーム。これらが僕らの事業全体のフレームワークです。上手く仕組み化できれば、直営だけではなく、フランチャイズやコンサルティングという関わり方での展開も望めると思います。
若目田:縦軸にも横軸にも事業展開するイメージですね。
渡辺:そうですね。ただ店舗数を伸ばしてというモデルではなく、店舗経営のナレッジの部分でITを上手く活用しながら、IT屋さんが提供できない業務ノウハウの部分をうまく組み合わせて、サービスを提供していくというイメージです。

今、最も力を入れている部分は?

若目田:今、最も会社でプッシュしている部分があれば教えてください!
渡辺:採用ですね。採用したい人材は、店長やスーパーバイザーです。今、新規事業として1棟借りしているお店の屋上の遊休地を活用して、別のブランドで二毛作ビジネスをすることを考えています。外食事業のマネジメント層が、浜松は本当に少ないので、この地に住んで、日本全土や海外で挑戦したい人は声をかけてくれたらと思います。

編集部コメント

仕事もプライベートも本気で取り組む渡辺代表、そして東海有数の飲食ベンチャー企業としてこれからも躍進する様子を見せる株式会社こころ。浜松の飲食業界の未来を牽引するのは彼らに違いありません。今後のこころの展開に注目が集まります。

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