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東京と浜松の二拠点生活で経営コンサル事業を展開|simpleA 冨士川氏にインタビュー


日本国内の人口減少により、企業や地域社会での人手不足が顕著となっています。国土交通省は都市住民が農山漁村などの地域にも同時に生活拠点を持つ『二地域居住』などの多様なライフスタイルの視点を持ち、地域への人の誘致・移動を図ることが必要」(国土交通省『二拠点居住の推進』より)と二地域居住の推進を図っており、地方では移住や二地域居住の情報提供やイベントの開催がされています。今回は、東京と浜松市天竜区水窪に拠点をもつ合同会社simpleAの冨士川 凛太郎氏にインタビューをし、彼の考える二拠点生活のビジネススタイルついて伺ってきました。

目次

プロフィール|冨士川 凛太郎 氏

1980年生まれ、熊本県出身。豊橋技術科学大学博士後期過程修了後、日立製作所に入社。2012年に合同会社simpleAに転職、浜松市天竜区水窪へ家族と移住。2017年4月、AuB株式会社の取締役、同年11月に合同会社simpleAの社長に就任。東京と浜松市天竜区水窪を拠点に経営コンサル事業を展開している。

東京と浜松の二拠点生活

撮影協力:小松屋製菓(浜松市天竜区水窪町)

小澤:今回は首都圏と地方に拠点を持って事業展開している起業家にインタビューということで、そのビジネススタイルについて質問していきたいと思います。
冨士川:はい、よろしくお願いします。
小澤:取材前に冨士川さんのご経歴やSNSを拝見して、本当に色んなことをされているなと感じました。ひとことで言うと、冨士川さんはどこで何をしている方なのでしょうか?
冨士川:東京と浜松市天竜区水窪を拠点に、経営コンサルの仕事をしています。
小澤:どんなことをメインでやっているのですか?
冨士川:分かりやすく説明すると新規事業立ち上げのお手伝いです。現代では技術や市場の進歩が早く、企業が新規事業を立ち上げる場合にいろいろと判断できる人材が企業内にいないということがよくあります。
例えば、「新しいアプリを作りたい」という時に、業者の選定はどうしたらいいのか?その業者の見積もりは妥当か?そもそもどのように発注したらいいのか?という状況のときに、その企業と一緒に考えてプロジェクトを進めるのが仕事です。コンサルティングだけでなく、システム開発も行うこともあります。
小澤:東京と浜松の二拠点生活をされていますが、主にどの地域のクライアントさんと仕事をされているのでしょうか?
冨士川:東京と浜松の両方ですね。

Facebookページ「水窪likers」より引用

小澤:元々、東京の大手企業で物流システムのコンサルティングをされていた経歴がありますよね。浜松市の水窪へ移住するきっかけを教えて頂けますか?
冨士川:simpleAの前社長である金城とは学生時代からの知り合いで、会社員の頃に仕事を手伝い始めていました。仕事の内容的にどこに住んでいても問題がないので、何回か親戚の法事で来たことのある水窪に引っ越そうを決めました。
小澤:お仕事はどこでもできるということですが、なぜ東京から地方の水窪へ移住されたのでしょうか?
冨士川:理由は大きく分けて2つあります。
1つ目は東京に比べて地方は生活コストが安いことがあげられます。どこでも仕事ができると言っても、さすがに企業を辞めると収入が不安定になると思ったので、家賃や固定費を抑えられる田舎に住むのがいいかなと。
東京との行き来で交通費はかかりますが、あくまで変動費なので仕事があればかかるけど仕事がなければかかりません。
2つ目の理由は、これからの日本の先進課題に触れたいという思いがありました。
水窪は人口2000人で高齢化率が50%です。過疎化が進んだそういう地域にこそ、先進的な課題があって、それを解決するITシステムや新規事業のタネがあるはずです。
そのため、実際に体験してやろうと思って引っ越しました。

求められることをこなしていたら、今のスタイルが確立された

Facebookページ 水窪likersより引用 五穀屋「水窪アワ収穫体験会」の様子

小澤:浜松の銘菓「うなぎパイ」で有名な春華堂さんともお仕事をされていると伺いました。
冨士川:春華堂さんとは、会社としてはアプリ開発の仕事を頂いていますが、それとは別に水窪にあるNPO法人の活動で、アワなどの雑穀を育てていています。
春華堂さんがやられている「五穀屋」という雑穀を使ったお菓子のブランドがあって、水窪で育てた雑穀を一部使っています。
小澤:ビジネスに加えてまちづくりのNPO活動にも繋がっているんですね。Facebookページ「水窪likers」でアワ畑の中にダイニングテーブルを作ったり、ミシュランの星のシェフと一緒にアワの収穫体験をしたり、というイベントを拝見しました。どんな方が参加されたのですか?
冨士川:今回はプレイベントということで、春華堂さんが水窪の小学生を招待してくれました。この山の中だから、畑の中でこそ映えるイベントだと思います。
小澤:とても粋なイベントだと思います。その時の反応はいかがでしたか?
冨士川:子どもたちも喜んでいましたし、Facebookページの反応もすごく良かったです。
小澤:今回はプレイベントということですが、本イベントがこれから行われるんですね?
冨士川:こちらは現在準備中で、今年の9月に開催予定です。
今回は雑穀研究会の学術集会とダイニングイベントを同日に開催予定です。雑穀研究会というのは日本の農学系の研究会で、今年は水窪でやってもらうことになっています。
また、simpleAとは別に私が取締役を務めるAuB株式会社は、アスリートの腸内細菌の研究をしています。こちらでは、雑穀がヒトの腸内細菌にどのように良い影響を与えるかを調査予定で、その結果について9月の雑穀研究会で発表する予定です。
小澤:水窪を通して複数の企業、産学、まちづくりのNPOとさまざまな繋がりが生まれているんですね。冨士川さんのビジネスを一言で説明できない理由が理解できた気がします。
冨士川:求められていることをひとつずつ丁寧にこなしていたら、今のスタイルが確立されていきました。

二拠点生活で仕事のチャンスは2倍になる


小澤:実際に二拠点生活をして感じるメリットを教えてください。
冨士川:私は人材をアサインすることが仕事の一部なので、拠点が二つあると足りてない場所に人を連れてくることができます。
例えば、地方ではAIやIoTについての人材が足りなくても東京から優秀な人材を引っ張ってきたらいいので、選択肢が広がります。
仕事以外だと、個人的には、子育てするには田舎がいいと思います。
子どもはもうすぐ5歳で水窪の幼稚園に通っていますが、周りも良い人ばかりですし、妻も娘ものんびり暮らしています。
小澤:二拠点生活のデメリットはありますか?
冨士川:交通費と家賃がかかるということですね。二拠点分の家賃と言っても水窪の家賃は東京に比べて安く、 今度引っ越すところもすごく広くていいですね。
小澤: 地方で暮らしたい若者にとって仕事がないのでは?と懸念される人が少なくないと思います。冨士川さんはいかがでしたか?
冨士川:仕事がないどころか、チャンスが2倍になりました。
小澤:今後、ビジネスで力を入れていきたいことはありますか?
冨士川:昨年取締役に就任したAuB株式会社もそうなのですが、今の先進的な企業で本当に必要とされているのは、単なる「コンサルタント」や「システム開発業者」ではなく、「事業パートナー」ではないかと思います。より中長期的に、会社に親身に関わり、且つ外部の人間としての知見を発揮することができる役割です。
個人的に興味がある業界としては、バイオ、農業、製造業などいろいろありますが、とにかく楽しそうな会社で、事業のパートナーを必要としている会社があれば、一緒に仕事をしたいと思います。そして、私が関わる企業やその取引先企業も含めて、シナジーを引き出せるような仕事がしたいですね。

編集部コメント

地方移住と聞くと都会の暮らしを捨てていくという先入観がありますが、冨士川氏の話から二拠点生活は都会と地方の良い部分を取り入れることが可能だと思いました。また、二拠点で活動する人たちは首都圏と地方のパイプ役となり、人口減少社会の日本ではますます求められているのではないかと感じられる取材でした。

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