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【士業向けセミナー】ビジネス領域としてのスタートアップ支援|aviators司法書士事務所 真下 幸宏 氏講演レポート


2021年3月19日(金)、前回スタートアップ・経営者向けの続編となる「ビジネス領域としてのスタートアップ支援」士業向けセミナーが、オンライン開催されました。
地域内でスタートアップ投資の件数が増加する中、スタートアップ支援において士業側でも正しい知識を持つ重要性が高まっています。そこで本セミナーでは、士業がスタートアップ支援をビジネス展開する際のポイントと留意点が解説されました。
講師には、年間150件以上、調達額ベースで約190億円に上るエクイティファイナンス支援を行うaviators司法書士事務所代表の真下 幸宏 氏が登壇。士業から行政担当者、企業のイノベーション推進を担う担当者まで、スタートアップ支援に関心を持つ参加者が集いました。本記事では当日の様子をレポートします。

セミナースケジュール

18:30〜19:30 真下 幸宏 氏 講義
19:30〜20:00 質疑応答、ディスカッション

登壇者プロフィール

真下 幸宏 氏|aviators司法書士事務所 代表、司法書士。大学卒業後、静岡県警察にて警察業務に従事。その後民間企業を経て、司法書士法人で商事法務に携わる。2014年に独立、現在はスタートアップの資金調達やM&A、株主総会の運営サポートをメインに年間150件超の支援を行っている。

目次

ビジネスとしてのスタートアップ支援、エグジットまでのスタートアップと士業の関わり方

出典:aviators司法書士事務所

出典:aviators司法書士事務所

起業にはじまりエグジット(投資回収)に至るまで、スタートアップ経営において必要な業務上の手続きは多数あります。それらの手続きに初めて向き合うスタートアップも多いため、ここで士業の支援が必要とされます。
2014年よりスタートアップ支援を行ってきた真下氏は、自身の実体験から士業の役割について次のように語りました。

「過去に起こした1つのミスが、将来ビジネスが発展した段階において重大なトラブルに発展することがあります。ただ、事前に知っていれば未然に防止できるものばかりです。そこで、起きえるトラブルを予測し、支援先の起業家へ伝えるようにしています。起業家のリソースを事業の成長に傾けてもらえるようにしたい、との想いからです」

司法書士をはじめ、弁護士や税理士など、さまざまな士業がスタートアップの事業成長に関与します。どのタイミングや業務に対して、各士業のニーズが高まるのでしょうか?真下氏から丁寧に説明がありました。

「例えば、法人設立登記が必要となるスタートアップの設立時は、司法書士が関与できるタイミングです。この法人設立を起点とし、税務や労務といった周辺業務も発生します。税理士や社会保険労務士が関与できるのも、この法人設立のタイミングであることが多いのです。
法人設立の時点では、法人登記や税務署への届出など定型業務のスポット契約がほとんどだと思います。ただ、その後に仕事の相談・依頼をいただくきっかけとなるため、スタートアップとの重要な接点でもあります」

▲各士業が行うスタートアップ支援の業務と契約形態の例、出典:aviators司法書士事務所

▲各士業が行うスタートアップ支援の業務と契約形態の例、出典:aviators司法書士事務所

スタートアップとの信頼構築が鍵。スタートアップの変化や成長は著しいことから、支援者側の業務も必然的に多くなるとのこと。スポット業務や初めての依頼へ確実かつ丁寧に応えることで信頼を得れば、その後のリピートや顧問契約につながります。
また、資金調達や上場などはスタートアップに特有のイベントです。専門性を持った士業の知見が求められるタイミングとなります。

「支援先が資金調達をするタイミングで、士業の仕事は一気に増えます。数千万円から数億円規模の資金がスタートアップに出資され、従業員の雇用やストックオプションの発行、本店の移転などが発生するためです。
上場手続きに関するノウハウを持つ士業は、数がまだ少ない印象です。上場手続きに明るいだけで同業他社との差別化になるほど。上場審査では労務管理が重要視されるので、上場準備段階では社会保険労務士の需要も大きくなります。」

このように真下氏は、各士業がそれぞれに強みを発揮し、スタートアップ支援をビジネスとして発展させるポイントを語りました。
現在は商業登記を専門領域とし、スポット業務が売上げのほとんどという真下氏。スタートアップ支援を開始したころから現在に至るまで、どのようにノウハウを蓄積したのか聞きました。

「特殊なノウハウが必要でありながら、スタートアップは開示される情報も多いのが特徴です。1つひとつの事例を研究したことが、ノウハウの蓄積につながりました。
例えば、会社・法人の登記事項証明書(登記簿謄本)は、Web上で税込み334円/1通で取得できます(登記情報提供サービス利用時、2021年3月時点)。登記簿謄本を見ると、資本金と発行済み株式総数の推移がわかります。過去に発行した種類株式や新株予約権の内容も載っており、その会社が行った資金調達の経緯を把握できるのです。
実際に受任した手続で起きたさまざまな事象に加え、自社で関与していないスタートアップの事例もストックすることで、個別具体的な相談にも事例にもとづく回答ができるようになります。あるいは、業務委託の形でスタートアップの社内業務を請け負っていた時期もありました。そうすることで、専門家としてどのようなサポートを行えば良いのかが、より具体的にわかります」

資格の範囲内だけを見ても、各士業が行える業務は多岐にわたります。ただし、最高のサービスを提供するためには、「強みの無いものをやらない」と割り切ることも必要だと真下氏は言います。そのためにも「他専門家との“真のネットワーク”を構築することが重要」とのこと。スタートアップ経営の中で各専門業務は密接に関わっているため、信頼できる士業との連携を深めておくことが重要だそうです。

質疑応答・ディスカッション

講義の最後には、質疑応答・ディスカッションの時間が設けられ、参加者と講師が意見を交わしました。地方におけるスタートアップ支援の課題点や、近年で新しい資金調達方法に関する最新情報などがやり取りされました。士業を中心とする参加者の高い意欲が感じられ、浜松市におけるスタートアップ支援の今後に期待が高まります。

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