士業の枠を超え、スタートアップを支援するスタートアップを目指すー税理士法人We will杉浦氏

投稿者 | 2017-08-21

スタートアップ創業初期は、資金調達や経理などの面で苦い思いをする場面が多々あります。特に地方ではスタートアップに特化した士業が少なく、経営経験の少ないプレーヤーにとってバックオフィスの立ち上げはもっとも苦労するポイントです。今回は浜松のスタートアップのバックオフィス問題を支える存在である税理士法人We willの杉浦氏にインタビューをさせて頂き、その取り組みについてお話して頂きました。

杉浦 直樹 氏

1975年生まれ、浜松市南区出身。上智大学卒業後、日本オラクルにて会計ERPパッケージの13社同時展開プロジェクトを経験後、NTTドコモ、トヨタ自動車の営業担当マネージャーとして多くのプロジェクトに携わる。同社退社後、米国ベンチャー企業を経て平成19年に税理士事務所へ入所し幅広い実務経験を積む。その後、個人税理士事務所開設を経て、平成28年12月に税理士法人Wewillを設立。

「いつの間にか支援していた」。We willが浜松のスタートアップ支援に注力する理由

若目田:浜松市内のスタートアップ企業の方々を取材していると、「バックオフィスと言えばWe willさん」とよくお聞きします。

杉浦:おお〜、それはありがたいお言葉です。

若目田:通常の税理士業務だけでなく、スタートアップ企業の支援をされているとお伺いしました。どういったきっかけがあって支援を始めたのですか?

杉浦:いつの間にか支援していた、というのが正直なところです。やっぱり好きなんですね。スタートアップをやっている方は答えがない中を模索して事業を進めているので、「無駄と感じることや既存の慣習もどんどん壊していこう」といった勢いが伝わってきます。

多数派からは反発されるかもしれないけれど、既存の事業の拡大や収益化のセオリーをどんどん壊してくれる人たちは今の時代に必要だと思っていて…。そういう何か新しい価値を一生懸命ゼロから生もうとしている人たちをサポートしていると、サポートしている自分たちも結構楽しいんですよ。

若目田:スタートアップ企業の方々と関わっていくうちに魅了されたんですね。

雑務に忙殺される創業期のスタートアップの負担を削減する

若目田:今までどのくらいの数の企業を担当したのでしょうか?

杉浦:まだ始めたばかりなのですが、既に4社のスタートアップを担当しています。4社とも浜松の会社です。

若目田:We will側は、具体的にはどのような部分で貢献しているのでしょうか?

杉浦:メインは収益の拡大に集中できる基盤の提供や、事業の成長に合わせた支援サービスの提供です。創業初期のスタートアップ企業の皆さんからヒアリングすると、経理を含め業務のほとんどが雑務であることが多いんですね。スタートアップした新しい価値を提供するために時間を割かなければならないのに、日々の雑務に時間を取られているんです。

若目田:確かに、創業期はスタッフが増えれば増えるほど経営陣の雑務が増えていきますよね。特に経理が分かっていない状態で経理に挑むのは非常に時間がかかります。

杉浦:そうなんです。なので、その負担をなるべく減らしてあげたいと考えています。でも、創業期でも経理は雑務ではなく、案外戦略的な部分と密接に繋がっていることもあるので、私たちはただ仕訳をするのではなく、日々変化する業務の流れの中で自然に経理ができるような仕組みをどう整えてあげるかを考えて相談に乗っています。

当然、スタートアップは成長や変化が前提なので、業務が固まらないことが多いです。その時その時のフェーズに合わせて会計基盤を作る必要があります。請求書を1枚作るにしても、どうすれば効率化して仕組み化するのかを考えなければなりません。

私はオラクルでERP(Enterprise Resource Planning、経営資源計画、経営資源を有効活用するために行う管理手法や考え方)に携わってきた経験もあるので、業務フローの中で会計がどうデータを集めるのかという発想からバックオフィス面をサポートできると思います。

We willはスタートアップを支援するスタートアップ

名刺はメンバーによって色が違う。それぞれの「will」を尊重するのがWe willの理念だそうだ。

若目田:手厚くコミットして会計基盤を作ってサポートしているんですね。浜松にはWe willさんのようにスタートアップを支援する士業の方は多いのでしょうか?

杉浦:少ないと思います。スタートアップの多い都心に行けば支援する士業の方は多いと思いますが、それは鶏が先か卵が先かの問題だと思っていて、私たちのようなサポート業がもっとあれば、地方でももっとスタートアップが盛り上がる可能性があるはずです。

とはいえ私たちも知らないことは知らないですし、困ることが多いです。例えば先日、製造業のお客さまが新たに製造委託契約のようなものを結びたいと言ったことがありました。私もどうしていいかわからなかったので、弊社の士業ネットワークの中で契約書が得意な人を探し、一緒に契約書をの作成の仕方を考えました。

そういったサポートは自分の時間が許す限りの範囲にはなるし、サービスとして規定できる訳ではないのですが、お客様が必要としていることの中で自分がちょっとでも関われそうなことは、積極的に関わっていきたいです。

私は自分たちのことを、スタートアップを支援するスタートアップだと思って、今までの税理士事務所の業務を積極的にはみ出すような仕事の仕方をしたいなと思っています。

リスクを恐れず、既存の枠を度外視してこそ価値を提供できる

杉浦氏はfintechを用いた会計ソリューションの導入を得意とし、浜松ではいち早くfreeeの二つ星アドバイザーを獲得している。

若目田:浜松のスタートアップにとっては、その目線でコミットしてくれるWe willの存在はとても貴重ですよね。でも、それだけ関わるということは、その分責任も追うことになるのではないでしょうか。スタートアップなら、トラブルに巻き込まれるケースもあると思います。

杉浦:今のところはないですが、きっとあるんでしょうね。線引きは大切ですが、でも、それはもう信頼関係の問題だと思います。責任問題を考えてしまった結果、リスクを恐れてやれることがあるのにやれない状況になるのは非常に勿体無いです。私たちが話し相手になって、会話の壁打ちをするだけで考えが固まることもあるんです。だから、通常の業務範囲を度外視して進めていくことに価値を感じています。

若目田:税理士としての枠を超えて、クライアントに積極的に貢献しているんですね。

杉浦:今はまだ難しいですが、浜松市は、せっかく行政も民間もスタートアップに力を入れていこうとしている地域特性もありますし、今後は税理士法人の枠でできないことは別の組織として中小企業やスタートアップのサポートプラットフォームを作りたいなと思っています。

他の士業の方々とも繋がっていて、チームで浜松のスタートアップをサポートしていけたらいいなと感じています。そういった意味では、オープンなサポートプラットフォームの構築を目指したいですし、ほかの税理士事務所にも参加してもらって、お客様のバックオフィスに新しい価値を提供できたらと思っています。

編集部コメント

士業の枠を超え、浜松のスタートアップ企業と共に新しい価値を生み出すと意気込んでいるWe willの杉浦氏。杉浦氏のような視座でスタートアップに関わる士業のキーパーソンが増えれば、きっと浜松のスタートアップコミュニティも活性化するのではないかと感じることができました。

参照

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Masaki Wakameda について

1994年生まれ、栃木県出身。名古屋・タイ・東京のベンチャー3社を経て2015年4月にフリーランス(ライター&編集者)へ。名古屋のスタートアップの情報格差を解消すべく、5月よりNagoya Startup Newsを配信開始。8月に名古屋スタートアップ株式会社を設立し、国内外の複数のWebメディアを運営しています。Twitter: @wakamesun2