“人間が見たままの色・質感”を定量化する世界初の技術|株式会社パパラボ 加藤代表にインタビュー

投稿者 | 2018-07-23

製品のマーケティングテストや品質管理の現場において、“色”の測定は重要なファクターです。しかし、これまでは、色彩計や分光計、目視による定点観測が一般的で、“人間が見たままの色”を捉えられないことが課題でした。製品が実際に使用されるシーンで使用者が感じる色味に、違和感を生じる場合が多くありました。
株式会社パパラボ(本社:浜松市中区)では、人間が感じる色と質感を計測し、定量化する技術を確立。“2次元色彩計”を開発し、多岐の産業にわたり商品価値の向上や、コスト削減に貢献しています。静岡大学発のベンチャー企業、パパラボ加藤代表にお話を伺いました。

加藤 誠 氏|プロフィール

1979年静岡大学工・電子卒。1981年静岡大学・工学研究科修士課程了。同年、浜松テレビ株式会社(現:浜松ホトニクス株式会社)へ入社し、光計測システム・画像処理システムの開発に従事する。2001年3月有限会社パパラボを設立し、人間が視える色域全てを忠実に測る技術を商用化。2010年度、静岡県科学技術振興知事褒賞、2014年ダイハツ工業ものづくり技術省など受賞。2016年5月、経済産業省中小企業庁より「はばたく中小企業・小規模事業者300社」に選定される。2018年、パパラボを株式会社化。同社、代表取締役。

「人間が見たままの色・質感」の測定技術を商用化。ヒントはイギリスで見た情報番組

菅原:加藤さんは、光技術のリーディングカンパニー、浜松ホトニクスに長年お勤めだったと思います。そこから起業に至った過程を伺えますか?

加藤:浜松ホトニクスでは、光計測システム・画像処理システムの開発に携わっていました。キャリアを重ねるうち、遠隔で医療診断するカメラのシステム構築に抜擢されました。ノルウェーの奥地にあり、冬は雪で閉ざされてしまう病院で、医療検診の様子をカメラ撮影し、イギリスの病院に送信して遠隔診療するという試みでした。

菅原:その遠隔診療システムの構築が、起業のきっかけになったのですか?

加藤:確かに、その知識・経験は大きいのですが、直接のきっかけを考えるとイギリスの滞在先で見た「BBCテレビ」ですね。人間が“色”を認識できる仕組みについて、解説する番組がたまたま目に入りまして。

菅原:人間が“色”を認識できる仕組みですか?

加藤:はい。実は、「赤・緑・青」の3種の光を網膜で認識し、鮮やかな“色”を認識できる動物は、人間など一部の霊長類だけなんです。例えば、四つん這いの哺乳類は、白黒や偏った色帯しか認識しません。それは、もともと哺乳類には“色”を捉える感覚のバンドが4つあったものが、恐竜全盛時代に2つに退化したためです。人間は、進化の過程で3つ目のバンドを獲得し、“色”を捉えるようになったということです。その番組内容が、しばらく頭から離れなかったんですね。

菅原:人間が“色”を認識する仕組みに、強く興味をひかれたのですね。

加藤:浜松ホトニクス内では、経営方針の関係で色覚の研究ができませんでした。そこで、浜松市新都田にある静岡県創業者育成施設(インキュベートセンター)に身を移し、起業の準備をすることにしました。

そんな折、静岡大学在学中にお世話になっていた下平美文教授と再会しました。当時、下平教授が制作を始めようとしていたカメラフィルターが、昔まさに私がBBCテレビで見た「人間が“色”を認識する仕組み」そのものだったんです。

菅原:まさかのシンクロですね。

加藤:下平教授の研究技術の商用化を目指し、2001年、私が代表となりパパラボを創業しました。“人間が見たままの色”を再現するカメラに需要がありそうだということで、創業当初はデジタルカメラを発売しました。

自社の強みを徹底的に考え、“2次元色彩計”を開発

菅原:デジタルカメラの販売からスタートしたのですか。

加藤:事業としては失敗でした。“キレイに映る”ことが、デジタルカメラに求められることであって、“ありのままが写る”パパラボのカメラは、メインターゲットには受け入れられませんでした。

菅原:デジタルカメラの失敗から、どのように事業を軌道に乗せて行かれたのですか?

加藤:「弊社の売りは何か?」という問いに立ち戻りました。結局のところ、それは、“人間が見たままの色”を再現できる技術でした。色を正確に測るニーズは、製造業を中心にあることに気付き、その分野の課題を掘り起こしていきました。そして、ついに“2次元色彩計”を完成させます。

菅原:“2次元色彩計”について、詳しく教えていただけますか?

加藤:弊社の“2次元色彩計”は、人間が見える色を忠実に測れるカメラ方式の色彩計です。従来の1次元(点)ではなく2次元(面)によって測色することで、色にとどまらず、質感や絵柄までを比べることができるものです。

菅原:「質感や絵柄までを比べることができる」とは、具体的にどういったことでしょうか?

加藤:例えば、車の塗装を測色するとき、ボディーのカーブによって微妙に異なる部分的な“色”も、すべて捉えることができます。また、メタリック感やパール感といったワークまで、データに反映できます。つまり、どのような素材上の色でも正確にデータ化できるということです。

菅原:画期的な技術ですね。測色の現場において、どのような課題を解決できますか?

加藤:現在、“色”を正確に測定するためには分光器を使い、集まった光の波長がどう分布しているかを数値化するのが主です。しかし、メタリックなどの乱反射や、人の肌に乗せた化粧品の色味などは、質感まで含めた“色”が正確に捉えられないという課題がありました。すると、現状では、人の目による半主観的な判断に頼らざるを得ず、観察者によって識別する“色”に差が出るという問題がありました。弊社の“2次元色彩計”はこれらの課題を解決し、正確な“色”を捉えます。

菅原:具体的な活用シーンを教えていただけますか?

加藤:たとえば、とある建材メーカーさまに導入いただき、塗装のやり直しコストを削減した例があります。家を新築する際、塗装まですべて終えた後、色合いが違うという指摘が施工主から入ることがありました。3~4日かけ、塗装をやり直しに行くといったことが起きていたのですが、“2次元色彩計”の導入によりそういった事案をほぼゼロにすることができました。

菅原:テスト段階で完成・納品段階の正確な“色”を把握できるということですね。クレームやリコールのリスクが減り、非常に有難い技術ですね。

加藤:化粧品製造の大手企業さまでも、“2次元色彩計”を有効活用いただいています。試作段階で、ユーザーが求める質感や色味を、実際に使用するときの印象とおりに実現しています。

また、作り手や作業条件によって、味が変わりやすい食品製造の分野にも導入いただいています。各過程や完成品の色・質感を正確にデータ化することで、品質のブレを防ぎ、職人技だった技術をマニュアル化できるのです。

菅原:様々な産業における課題を解決する技術なのですね。

加藤:弊社では、お問い合わせをいただいたあと、検査内容やお悩み等をヒアリングさせていただきます。そこからコンサルティングや評価技術を経て、装置やシステムの設計・製造を行います。“色”に関してお悩みの企業様がありましたら、まずは、お気軽にお問合せいただけたらと思います。

▼お問合せフォーム
http://www.papalab.co.jp/contact/index.html
▼各種カタログダウンロードページ
http://www.papalab.co.jp/products/catalog.html

拡大する需要に合わせて成長を続けるパパラボ

菅原:今後は、どのように事業を展開していかれますか?

加藤:“インライン2次元色彩計”の販促を進めていきます。“インライン2次元色彩計”とは、コンベア上を流れてくる対象物の複雑な色や質感の定量化を行う装置です。弊社のインライン2次元色彩計は、分析機能を有しており、基準値との比較でOK/NG信号を出力するのです。

菅原:品質検査の効率が上がりますね。

加藤:このインライン化できる色彩計というのも、実は弊社独自の技術です。これまで、識色のカラーカメラや測色装置はあっても、非接触で対象物全ての“色”を検知できる機械はありませんでした。

菅原:ますます需要が増えていきそうですね。

加藤:大手企業さまを中心に、希望納入先も増えてきましたので、今期から新卒採用を強化しています。

菅原:貴社で働くメリットはなんですか?

加藤:入社してすぐ、多岐にわたる仕事を経験してもらうので面白いと思います。例えば、情報系の卒業生でしたら、プログラミングやファームウェアを組んでもらいたいです。展示会への出展や当日の接客など、お客さんの反応が直接分かる仕事もお任せしたいと思っています。

菅原:どのような方が適任でしょうか?

加藤:弊社の技術に純粋な興味関心を持ち、なにが顧客のためになるかを徹底して考えられるような方です。それから、英語のできる方の採用を急いでいます。近い将来、既存お取引先の海外現地法人を中心に、海外への製品販売も増えそうなので。

菅原:自身の働きが会社の成長に直結し、やりがいを非常に感じられそうです。

加藤:ビジネスパーソンとしての幅が広がると思います。大手の製造業企業に入社すると、しばらく工場での研修や、1セクションでの細かい仕事ばかりになります。現在弊社に8名いる社員がバックアップもしますので、やる気のある方にぜひ来てほしいと思います。

編集部コメント

加藤代表は、目の前の仕事に誠実で熱心な方という印象でした。仕事に専念するうち、大学内の優れた技術や人との出逢いといったといったチャンスが訪れ、紆余曲折を経ながらも事業を形にしていかれました。このビジネスとして軌道に乗せるまでの軌跡は、まさにベンチャーの成功法則ではないでしょうか?優れた研究内容が静岡大学内にあったことも、成功の大きな要因です。加藤代表のお話を伺い、大学発ベンチャーの神髄を見た気がしました。