外食産業の人手不足をロボット技術で革新する|株式会社モリロボ 森啓史氏のインタビュー

投稿者 | 2018-09-01

外食・中食産業における人手不足は、製造業や卸売・小売など他産業に比べて2倍以上も高く(平成30年,農林水産省食料産業局「外食・中食産業における働き方の現状と課題 」資料より)、深刻な問題となっています。

今回は、人手不足の解決策として、外食産業にロボット技術を提案する株式会社モリロボの森代表にお話を伺いました。

森 啓史 氏|プロフィール

佐賀県出身。芝浦工業大学卒業後、スズキ株式会社にてロボットや溶接、金型などの製造ラインの製作に携わる。 2017年7月に株式会社モリロボを設立、代表取締役に就任。クレープロボット「Q」の設計・製造・販売を手掛け、第5回はましんチャレンジゲートのベンチャー部門では最優秀賞を受賞している。

ロボット技術の活用は、人手不足が加速するサービス業の救世主


小澤:自動車業界から、なぜ外食産業のロボットで起業したのか教えてください。

森:起業の原体験は、学生時代のクレープ店でのアルバイトです。私がアルバイトをしていたクレープ店では、クレープの生地を焼けるのが私と店長の2人だけだったんです。そのため、お盆休みなど私が地元へ帰省している間は店長1人だけで生地を焼くことになり、大変な思いをされていたんですね。

アルバイトを増やせばいいという簡単な話でもなくて。クレープの生地作りで一人前になるには、1ヶ月ほど練習してやっとという世界です。当然、練習用に作る生地は売り物になりませんし、その間のアルバイト代もかかります。

小澤:指導をする職員の人件費もかかりますよね。

森:そうですね。さらに、少子高齢社会で若い世代の人口が減少し、飲食店は人手不足でアルバイトを募集しても応募がないそうです。

最近、大手牛丼チェーン店でアルバイトがおらず、営業できないというニュースが話題になりましたよね。人手不足の深刻化が伺えました。今後、サービス業では人手不足を補うためのロボット技術は、間違いなく需要があるし、進めなければならないと私は考えています。

小澤:ロボット技術は、ものづくりの現場で浸透しているイメージがあります。森さんが以前働いていた自動車産業と比べて、外食産業でロボット技術の活用が遅れている原因を教えてください。

森:自動車産業は、いかに人の手を介さずに、高品質のものを作られるかを極限まで考え、作業工程を秒単位で削ります。その最たるものが「トヨタ生産方式」、つまり現場主義や改善という考え方ですね。

自動車産業にいた私も、普段からいかに効率よく作業できるかを考える癖がついています。例えば、ラーメン店に入って厨房を見ていると、いろんなところに改善の余地を感じました。それは、ロボットではなくてもいいのですが、この場所でフックやカゴを使ったらものすごく楽になるのにとか、重い物はわざわざ人が運ばなくてもいいのではないか、とか。

小澤:飲食店の場合、厨房やホールなど、最初に設計した動線は変えにくいでしょうね。

森:それが、自動車業界は工場ごとごっそり変えてしまうんです。それにより、どれくらい生産性が上がるのかという数字が出せれば、コストがかかっても改善します。

その価値観が自動車業界と外食産業の違いであり、外食産業でロボット技術の活用が遅れている原因だと考えます。

クレープロボット「Q」の市場投入を開始

小澤:2018年8月から、クレープロボット「Q」の市場投入を開始されました。最初の顧客と、販売につながった経緯を教えてください。

森:浜松駅前にあるホテルオークラ浜松殿さまが最初です。浜松のラジオに出演させていただき、「こんなロボットを販売しています」と話したところ、ありがたいことにホテルの関係者の方からお問い合わせがありました。

クレープロボット「Q」は製造業のまち浜松で作られたもの。ホテルオークラ浜松殿さまとしても、地産地消で浜松らしいものを求めていたようです。

小澤:市場投入をし、何か課題は出ているのでしょうか?

森:耐久性の問題で、機械に不具合が発生する場合があります。現場では、会社での試験時間以上に、かつ連続的に使用されます。

また試験では、クレープの生地がうまく焼けるレシピを開発し、販売先にお渡ししていました。しかし、現場では生地がうまく焼けずに破れてしまうことがあります。使用している卵やバターの違いや、店独自のレシピを使用されているのが原因かと考えています。

小澤:まずは市場投入をして、現場での課題を改善して、完成度を上げていく段階だということですね。クレープロボット「Q」のゴールは、どのようなものを見据えているのでしょうか。

森:お客さまが、好きなタイミングでロボットを使って、好みに沿ったものを作れるのが理想です。ホテルでは、食事がビュッフェスタイルで提供されています。子どもたちが自分で作ったクレープを、ご両親や祖父母に「僕が作ったんだよ」と自慢できる。そういうところに一番価値があるのではないかと思っています。

国内外でクレープロボットの需要が見込める理由とは

3色クレープロボット

小澤:今後はどのような販売先を拡大していく予定なのでしょうか。

森:来月から、クレープ店をチェーン展開している、東京の企業に導入していただく予定です。テスト導入として、浜松の志都呂イオンでやらせていただくことになっています。これで、人手がなくても営業できるということが実証されれば、ロボットを導入すればするほど、人手不足の解決策に繋がると考えています。

小澤:日本政府の「ロボット新戦略」では、ロボットの市場規模を2020年には2兆4,000億円へと成長させることを目標(※)としています。ロボット産業の市場予測では、製造業はもちろん、外食産業を含めたサービス分野での拡大が顕著です。

※総務省|平成27年版情報通信白書 特集テーマ「ICTの過去・現在・未来

森:それは、やはり日本の人口減少による人手不足を補うために、ロボット技術の活用が求められているからだと思います。また、外食産業の人手不足の課題を抱えているのは、日本だけではありません。

クレープロボット「Q」の動画をYouTubeに投稿してから、海外からの問い合わせも増えています。一番多いのはフランスで、その他にはアメリカ、中国、インドからの問い合わせがあります。クレープは、もともとフランスの食べ物ですからね。

小澤:すでに海外からのお問い合わせもあるんですね。中国やインドには、どのような需要があるのでしょうか。

森:中国やインドにも、クレープを食文化としている地域があります。中国の一部の地域では、朝食や小腹が減ったときの軽食として、「煎饼果子(ジェンビングゥオズ)」を食べています。こちらは、甘いみそダレやネギなどをクレープ生地に包んで食べるものですね。人口約4億人の南インドでは、朝食や昼食に「ドーサ」が食べられています。

ロボット技術で外食産業の人手不足を解消するための仲間を募集中

Maker Faire Tokyo 2018にて、クレープに盛り付けをする子どもたち

小澤:2017年に起業されて1年が経過し、クレープロボット「Q」の市場投入も開始され、今後は販売促進にも注力されていくかと思います。現在、社員は何名いらっしゃるのでしょうか。

森:私を含めて社員は2名で、全く人手が足りていない状態で。展示会などでは、浜松の方々にご協力をいただいており、大変感謝しております。

ロボットに興味を持っている学生さんや社会人の方がいらっしゃったら、ぜひ一緒に働きたいですね。

小澤:求める職種や人物像を教えてください。

森:私ともう1人の社員も技術者なので、営業が弱い状態です。そこを補ってくれるような方も必要ですね。

小澤:ロボットの営業には、どのような視点が必要でしょうか。

森:例えば、クレープロボの3色クレープを試作したとき、私たちは「これはダメかなあ」と試作を中止しようと思いました。しかし、3色クレープを妻に見せたところ、「これはいいよ。見た目的にも女性や子どもに喜ばれるはず!」と言われたんです。自分にはない視点だったので、客観的な視点が大事だなと思いました。

小澤:確かに、3色クレープの写真を拝見して、InstagramやTwitterなどのSNSで、若い人にバズりそうだなと思いました。

森:8月上旬に開催されたMaker Faire Tokyo 2018では、クレープロボ「Q」の運転だけではなく、子どもたちにクレープの盛り付けを体験してもらいました。専用のエプロンと帽子をこちらで用意して作ってもらったら、とても喜ばれましたね。

小澤:今後、サービス業へのロボット技術の導入が増えた場合、どのような未来が待ち受けているとお考えですか?

森:ロボットが普及すると人の仕事が奪われると考える人もいますが、そうではないと思います。

例えば、寿司ロボットの普及により、回転寿司店は増加しました。では、寿司職人の仕事がなくなったかというと、むしろ寿司を食べる人が増えて市場が拡大し、職人の握る寿司の価値が高まりました。

ロボットに任せられる部分を任せれば、人対人のコミュニケーションのように、人でなければならない部分に時間が割けます。ロボットが当たり前になると、そんな社会になっていくでしょうね。

編集部コメント

外食産業の人手不足を、ロボット技術で革新するモリロボ。人口減で労働力の不足が加速する日本はもちろん、海外での需要も見込め、今後の展開に期待が高まります。