「貿易は誰にでもできる」海外輸出にITで新たな一手を打つエイグローブ株式会社

投稿者 | 2017-08-18


自信のある商品を、海外でも売り出してみたい。海外というチャレンジングなマーケットに挑んでみたい。でも、ノウハウもツテもないし、何からどうやって始めたらいいのか全くわからない… 海外輸出を考えている多くの中小企業が最初に持つ悩みではないでしょうか。

そんな企業の悩みに寄り添い海外販路獲得のサポートをしているのが、浜松市のエイグローブ株式会社です。これまでに18ヶ国、100社以上の中小企業の海外進出支援実績を持ち、様々な「メイドインジャパン」の魅力を国外に広めてきました。

今回は代表の小粥おさ美氏に、日本企業の海外進出に対する見解やITを使った新たなサービスについて、お話を伺いました。

プロフィール

小粥おさ美(おがいおさみ)。静岡県出身。国内の大学に進学するも海外留学の夢を諦めきれず大学を中退し、渡豪。クイーンズランド州立大学院卒業後、現地オーストラリアの旅行会社で働いた経験を持つ。帰国後は、スズキ株式会社で欧州進出プロジェクトの通訳兼コーディネーターを担当。その後独立し、企業通訳・翻訳に従事。2013年にエイグローブ株式会社を設立。

海外で売れる・売れないかより、まずは一歩手前の機会作りから

岩渕:小粥さんの豊富な海外経験はおそらく事業にも繋がっているのだと思いますが、現在の主な事業内容を教えていただけますか?

小粥:簡単に言うと、海外輸出の支援です。メイドインジャパンの商品の海外販路や売り先を見つけるのが主な事業です。そのために海外の展示会に同行したり、販促物やECサイトなども手がけています。

岩渕:メイドインジャパンの商品なら、何でもOKなのでしょうか?メイドインジャパンと言えど、海外で売れるか・売れないかは小粥さんの見識で判断したりしませんか?

小粥:相談いただいた商品に対して、私たちが売れる・売れないをジャッジすることはしません。私の起業を後押ししてくれた方がよく、「私は起業家をいつでも支援するけど、その人が失敗するか・成功するかは自分では決められない」と仰っていて。絶対失敗すると思っていた人がすごく成長したり、いけるぞと思った人が全然駄目だったりすることは往往にしてある。そのジャッジはできないけれど、機会創出や後押しはできる、という言葉が心に残っていて。

岩渕:将来性の正確なジャッジなんて、誰もできないですよね。

小粥:そうなんです、エイグローブも同じ立場だと感じています。企業様からご相談を受けて、「これは海外ですごく売れるだろう」と思うものも「難しいかも」と思うものも正直あります。でも実際は、答えはお客様が持っているのです。実際に「欲しい」と思って買う選択をするのは、海外の買い手ですしね。

私たちはジャッジするのではなく、商品が海外の方々の目に触れる機会を創出し、どうすればより売れるかを考え、海外向けに商品の味や量、パッケージをアドバイスしたりします。

岩渕:「売れる・売れない」ではなく、それ以前の機会作りをエイグローブが担っているのですね。

スタートアップと海外進出は似ている、だからこそ3年は続けて

日本製高級ルアーをオーストラリアの展示会で出展 画像引用元:エイグローブ株式会社ホームページ

岩渕:日本企業が海外販路を獲得する際に気をつけるべきことは何でしょうか?様々な企業の海外進出に携わった小粥さんの観点で教えていただきたいです。

小粥:海外展開って、実は起業やスタートアップにすごく似ていると思うんです。起業家の生存率が極めて低いのと同じで、企業の海外進出も難しいこと。日本では有名な会社や商品だとしても、ひとたび海外に出たら信用も認知もされていない、ブランドも無しのゼロからのスタートです。

岩渕:なるほど。そういった点では、起業家と事業の海外進出はよく似ていますね。

小粥:展示会のサポートで海外に同行すると、海外のバイヤーから「日本企業はすぐいなくなるから商売相手にならない」とよく言われるんです。多分その意味は、海外ですぐに結果が出ないと折れてしまう日本企業がいるからだと思います。

実際は日本企業が海外に出ると、1年目は目新しさと好奇心で、すごく注目されます。2年目も、まだ見てもらえます。3年目でようやく「この人たち本気だな」と信用が生まれ、ビジネスが始まるのです。

岩渕:特に日本で成功している経営者にとっては、海外でなかなかビジネスが進展しない状況で2年3年と時間をかけなければならないことに、ショックを受けてしまうのかもしれませんね。

小粥:そうですね。海外進出をしたばかりの企業様には「費用対効果が全然合わない」と感じる方もいらっしゃいます。でも、「費用対効果」という言葉は、1年目、2年目では使えないと思うんです。信用もブランドもないところで「費用対効果」を考えるのはちょっと早くて。

私も起業したときに、「3年はやれよ」と先輩に言われました。1年目は、商売相手として信用できるか見られる。2年目も見られている。3年目からやっと信用を得られるようになるから、「まず3年はやれよ」と。それが、スタートアップと海外進出がすごく似ているなと思ったところです。

岩渕:厳しい状況もある一方で、日本企業として海外で発揮できる価値もあるのではないでしょうか。

小粥:もちろんです。日本の商品は質が良いので、メイドインジャパンと言っただけで海外では箔がついて、プラスに受け取ってもらいやすいです。日本にいたらすごいと思われなくても、海外に出て行っただけでそれだけの価値が発揮できるのは、これまで日本人が頑張ってきたおかげですね。

「うちはまだ早いかな」と考えすぎて乗り遅れるより、どんどん海外展開していった方がいいとも、私は思っていますよ。

海外に行かずに「バーチャルの展示会」で商品を輸出


岩渕:現在、特に力を入れている取り組みはありますか?

小粥:はい。海外に行って展示会に参加していたプロセスをWeb上で完結できるサービス”WEB EXPOO”を開発しています。言い換えてみれば、ネット上の仮想見本市です。海外販路の獲得において、海外の見本市に出て行くのは一つの手ですが、やはりかなりの費用がかかります。

岩渕:それを、わざわざ海外に行かなくてもインターネットを使えば完結できるということですね。

小粥:その通り。エイグローブの強みは、私の通訳としての経験や弊社の実績を通じて、海外バイヤーのリストをたくさん持っていること。それを、メイドインジャパンの商品を売りたい日本企業にインターネット上で繋げることができれば、海外の展示会に出なくても良いですよね。低コストで良い商品を海外に紹介できる、機会創出の仕組みになり得ます。

岩渕:なるほど。サービスの機能を詳しく教えていただけますか?

小粥:日本の企業様が海外展開に躊躇する理由は様々で、たとえば言語面や代金の回収などがあります。

私たちのサービスは、チャット画面上でのリアルタイム翻訳機能や、決済の代行など、皆様が困っていることがシステムで解決できるバーチャルの展示会になっています。商社や問屋を通さず、メーカーがバイヤーに直接売るのがコンセプト。サービスは月額費用型で中間マージンが発生しないので、私たちが企業様の商談・取引の足を引っ張ることもありません。

岩渕:海外に行かなくてもネット上で商談を完結することができるのは、とても現代らしい仕組みですし、何よりもスピード感を持って取引を進められそうですね。

相手の懐に入り、見知らぬ土地でも良いビジネス環境を創る


岩渕:海外輸出支援を行う企業は他にもあると思いますが、エイグローブならではの強みはどんな点でしょうか?

小粥:これは私たちが思っているというよりは、私たちを紹介してくださる方々に、「他の企業と違って懐に入っていくのが上手いよね」と言っていただくことが多いです。企業様の海外営業に同行した際に関わる現地のバイヤーは、直接ではなくとも私たちにとってはクライアントになる存在です。現地の方と仲良くなったり、ビジネスに繋げられる環境を創り出すのは得意だと思っています。

岩渕:良い環境を創るのが上手なのは、とても頼り甲斐があると思います。

小粥:起業家としてはそういったパーソナルな力も必要ですが、今後は会社としてこれを誰にでもできるような仕組みにしなければならないとも考えています。今後の課題でもありますね。

誰でも貿易ができる、その可能性を広めたい

岩渕:最後に、今後の目標を教えていただけますか?

小粥:海外輸出したいならエイグローブだと、全国的に認知していただきたい気持ちはもちろんあります。現在注力している”WEB EXPOO”のサービスは、今年の秋までにユーザー企業100社の登録を目指しています。3年後には1000社のユーザー、売り上げは3億近くを狙いたいですね。

数字としての目標はありますが、大事なコンセプトは「誰でも貿易ができるようになること」。80歳のおばあちゃんでも、英語ができなくて海外に行ったことがなくても、どんな方でも私たちのツールを使って自慢の商品を海外に売り出せたらいいですね。貿易がそんなに難しくないという考え方を広めていきたいです。

編集部コメント

豊富な海外輸出支援の経験から、さまざまな視点で「日本企業が海外でモノを売る」とはどんなことか、教えていただけました。新たなサービス”WEB EXPOO”も、海外進出をしたい方や不安を持つ方にとっての後押しになるのではないでしょうか。「自慢の商品を持って来てください、一緒に海外に売り出しましょう」と語る小粥さんの言葉がとても頼もしく印象的でした。