【後編】「みんなで取り組む、シン・やらまいか!」デザインシンキングワークショップ開催レポート

投稿者 | 2021-01-06

2020年11月27(金)・28日(土)に開催された、「みんなで取り組む、シン・やらまいか!」デザインシンキングワークショップ。エコシステムとしての浜松の今後を考えた2日間の様子を、3回にわたるレポートでお届けしています。

ワークショップの2日目は、前日に作ったペルソナ(代表的なユーザー)像をもとに、ペルソナにとって重大な課題を解決する製品・サービスを考えます。SAPジャパンによるファシリテートのもと、アイデアを素早く発散し形にしていきました。

この日は、鈴木康友浜松市長も会場でワークショップを視聴。終始盛り上がったワークショップの様子をダイジェストでお届けします。

前編はこちらから▶【前編】「みんなで取り組む、シン・やらまいか!」デザインシンキングワークショップ開催レポート
中編はこちらから▶【前編】「みんなで取り組む、シン・やらまいか!」デザインシンキングワークショップ開催レポート

「シン・やらまいか!」ワークショップ2日目スケジュール

15:00~15:15 前日の振り返りなど
16:00~17:15 アイデア創出
17:20~18:00 プロトタイピング・発表
18:00~18:10 まとめ

ユーザー課題に対するソリューションの考案

ペルソナ(代表的なユーザー像)の課題を深掘りした1日目に続き、2日目はソリューションのアイデアを具体的な形にしていきます。夕刻には、鈴木康友浜松市長も来訪を予定しており、本ワークショップへの行政の期待がうかがえます。

2日目は、「Ideate(発想)」と「Prototype(試作・試供)」を進めます。全員で前日の振り返りをしたあと、さっそく「Ideate(発想)」のワークに入りました。Web会議システム上のチーム分け機能を使い、グループワークを実施していきます。

▲前日中に、箇条書きの状態からまとめ上げられたペルソナ像

まずはアイデアの発散から。前日のペルソナの課題に対するPoV(Point of View:着眼点)を元に、解決策のアイデアを思いつくだけ書き出します。アイデアが出尽くしたところで、アイデアを絞り込みます。良いと感じたアイデアの書いてある付箋に星マークを移動。星の多く集まったアイデアをベースとして、さらなるブラッシュアップを進めます。

革新的なアイデアを創出するためには、多角的な視点が必要です。「Yes And…」のマインドで、1人のアイデアに対してチームメンバー全員のアイデアが上乗せされました。

「このワークの目的は、『この世にまだないアイデアを生み出すこと』です。アイデアが実現可能かどうかは、そこまで深く考えなくて大丈夫です。今は、アイデアを膨らませていくフェーズですので」(SAPジャパン、尾崎氏)

評価を集めたアイデアをカテゴリで分け、プロトタイプ作成に進めるソリューション案が検討されました。洗い出されたアイデアは、「投資から得られる価値」と「課題解決するために必要なコスト」の観点から整理していきます。

アイデアの検証とプロトタイプの作成

▲鈴木康友浜松市長も会場に駆けつけワークショップを視聴

ソリューションのアイデアが固まったところで、プロトタイプの作成に移ります。今回は、人に伝えられる形にするためストーリーボードを活用しました。ストーリーボードとは、ユーザー体験の流れを絵コンテで書き表したものです。イラストを時系列で並べることで、商品・サービスの価値がビジュアル化されます。

Mural上に用意された素材を使って、5コマ漫画のストーリーボードを作っていきます。プロトタイプを考えるにあたって外せないポイントは、以下の3つ。

  • 有用性:強いニーズ・需要があり、十分以上に価値を提供できるかどうか。
  • 実現性:ビジネスリソース上、実現が可能かどうか。
  • 実行可能性:直近のテクノロジーで実行できるかどうか。

この3つが重なるところに、イノベーションのスイートスポット(注力すべき分野)があります。良質に見えるアイデアも視点のどれかが欠けていないか注意しましょう。

ストーリーボードが完成したら、プロトタイプをさらにブラッシュアップします。2名を残してほかの3名はチームを移動し、移動先のチームでプロトタイプのプレゼンを聞きます。ほかチームから移動してきた3名により自チームのアイデアが評価されるとともに、解決策の再定義・改善が行われました。

最終発表

約1時間半をかけ、発散されたアイデアがプロトタイプにまとまりました。全5チームの発表内容は以下の通りです

チームA:大企業における新規事業の開発を加速するファンドの設立

新規事業案が通らず、社内の閉塞感に悩んでいたペルソナのためにコミュニティスペース「やらまいかファンド」を考案。市内の大企業とスタートアップが参加し、企業間の交流や成功事例の共有が行われる場です。スタートアップ企業による新規事業案の壁打ちが受けられるほか、ピッチの機会を提供し協業も促していきます。スピーディに起業できるほか、ファンドから出資も受けられるのが大きなメリットとなるコミュニティです。

 

チームB:製造業の実力を活かしたコンソーシアムの立ち上げ

革新的な事業に挑戦したい中堅企業の2代目社長に向け、浜松市内の中堅製造業が終結するコンソーシアムを考えました。高い技術力を持つ企業間でネットワークを組み、あらゆる試作の相談に対応できるようにします。これにより、イノベーションの実現に向けた試作品を作れる基盤を市内に創出。大企業OBのアドバイザー就任をはじめ、学生やスタートアップ社員の参画も促し、多様性を確保します。将来的に「made in Hamamatsu」のブランド展開も見据えています。

 

チームC:大学生のチャレンジを支えるWebサイトの構築

新たなチャレンジを求める大学生のために、価値ある職業・社会体験を得られる「クロスボーダー・インターンサイト・アット・浜松」を考案しました。大企業から中小企業、スタートアップまで、さまざまな起業のインターンシップが一覧できるサイト。浜松市公認のプラットフォームとして運営し、市が採択する事業にも学生がインターン参加できるようにします。本プラットフォームに登録することで、職業体験のイメージを持てることが学生にとってのメリット。チャレンジのハードルを極力低くし、学生の活躍を支援します。

 

チームD:事業開始から資金調達までをバックアップする起業の実体験番組サイト

「#NowStartingUp(ハッシュタグ・ナウ・スターティングアップ)」は、リアルタイムで起業の実体験を発信する動画サイトです。起業への一歩が踏み出せずにいるペルソナへの解決策として生み出されました。本サイトでは、先輩起業家の実体験をもとにした動画コンテンツが配信されます。起業の始め方や事業の進め方を中心に伝え、番組の視聴者の起業を促すのが狙い。サイト内のコミュニケーション機能により、先輩起業家や投資家、一般視聴者

とやり取りも可能に。資金調達や事業を先に進められる効果を期待します。

 

チームE:浜松移住が体験できるお試し就業・生活支援サービス

将来的にライフワークバランスを実現したいと考える40代ペルソナに向け、「浜松おためしIターン」を考案しました。浜松での就業体験と人脈形成の機会を気軽に得られるサービスです。いちかばちかの人生選択をせずとも、今の勤め先に所属しながら浜松での就業・生活を体験できるのがメリット。地域貢献を通じた、キャリアや人生上の達成感を味わえる仕組みも考えます。数々の体験メニューは、リモートでも受けられるとのこと。市内の企業との人材交流も可能です。

総評

全発表を終え、この日ワークショップの途中から視聴した鈴木康友浜松市長から総評がありました。

「この試み自体が、非常に良いと思います。いろんな(所属や専門の)人が2日間で(浜松市の新たな価値を考える)取り組みをすること自体に、可能性を感じました。

また、こうした取り組みを継続することが大事だと思います。次回はもう少し具体的なテーマを設定するなどして、ビジネスを作っていく取り組みをしたら面白いと感じました」

参加者の声

▲SAPシリコンバレーオフィスの壁面に書かれているという「イノベーションの地図」。日本の存在が書き忘れ去られていたことに衝撃を受けたSAPジャパン尾崎氏は、自身で日本を書き足してきたとのこと。こうしたエピソードが聞けるのも嬉しいポイント。

2日目のワークショップを終え、参加者からは次のような感想が聞かれました。

  • 6時間という短い時間でソリューションが構築でき驚きました。
  • 日ごろ、会社や組織のしがらみの中にいては難しい建設的な議論ができました。
  • ツールキットが事前に用意されていて、オンラインでもスムーズにワークを進められました。考えることに集中でき、とても良かったです。
  • 途中から、「シン・やらまいか!」の「シン」には「新」「誠」「進」など、さまざまな意味合いがあると気付きました。浜松市の可能性を感じた2日間でした。

 

編集部コメント

2日間、計6時間で開催された本イベント。ここで創出されたアイデアは、浜松市に提言されるともに、実現に向けて中長期的に対話が重ねられるとのこと。中部地域の活性化ひいては国内外におけるイノベーションの実現に貢献することが期待されています。

参照:下記のホームページリンクより、SAPが提唱するデザインシンキングの一端を学ぶことができます。
デザインシンキングが導くデジタル変革―SAP自身が実証したデザイン思考アプローチのインパクト
デザイン思考 | SAPジャパン ブログ