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葬儀や墓地の相談役として地域に安らぎを届ける|そうぎの窓口合同会社 代表 山崎 靖晃 氏、アドバイザー 田中 友紹 氏にインタビュー


世界で最も葬儀の費用が高いと言われる日本。葬儀の費用を捻出することが難しい人は多いそうです。高齢者の1人暮らしや少子化が進む中、墓地の維持ができないケースも増えています。
そんな中、葬儀や墓地に関する地域の相談窓口として設立されたのは、そうぎの窓口合同会社(本社:浜松市西区)。山崎 靖晃 代表、そして田中 友紹 アドバイザーにお話を伺いました。

山崎 靖晃 氏|プロフィール

浜松市出身。大学を卒業後、ネットワンシシステムズ株式会社(本社:東京都千代田区)に入社する。エンジニアとして8年間勤務したのち、浜松へUターン。地元で新しいサービスを提供したいとの想いから、複数の事業を立ち上げる。高級車専門のカーシェアリングサービス「PREEXS(プレックス)」主宰など。

田中 友紹 氏|プロフィール

浜松市出身。光雲寺(浜松市西区)で副住職を務める。幼いころから寺の仕事を手伝いを始め、僧侶の道へ。檀家や信者の相談に耳を傾けるうちに、新しい葬儀や墓地の在り方を模索するように。そうぎの窓口立ち上げに参加し、アドバイザーとして葬儀や墓地に関する地域の悩みに寄り添う。

目次

1人ひとりに合わせた、よりよい葬儀とお墓の形を


菅原:まず、貴社の概要を教えてください。
山崎:そうぎの窓口は、葬儀やお墓のことなら何でも相談してもらえる窓口です。依頼主の希望や不安に思っていることをお聞きして、予算に合わせたご供養の形を提案しています。
菅原:どのような理由で創立したのですか?
山崎:葬儀やお墓の選択肢を増やすためです。日本の葬儀は高額で、セレモニー形式で1回150万円以上かかるとも言われています。お墓の維持には費用がかかるうえ、引き継いでくれる親族がいないという理由で悩んでいる方もいます。
田中:そんなとき、気軽に相談できる場所がつくれないかと思ったんです。「あそこのお寺さんなら相談にのってくれる、何とかしてくれる」と思えたら、葬儀やお墓に関する不安がとても減りますよね。“昔のお寺”というのは、そういう場所だったと思います。
菅原:窓口を通じて、ちょうど良い葬儀やお墓の形を提供したいということですね。例えば、どのようなサービスを展開していますか?
山崎:葬儀については、会館の手配以外のサポートができます。火葬後の遺骨を自宅やお寺に直接送ってその場でご供養をする直葬のプラン。葬儀ができずに自宅で保管したままの遺骨のご供養プラン。それから、お坊さんの紹介のみも承っています。
お墓は、浜松市内の墓地や霊園を紹介できますし、永代供養塔なども手配できます。“小さなお墓”という、永代供養の個別墓というプランも提供しています。送骨といって、お寺に遺骨を送付してもらい合祀で納骨と供養を行えます。
菅原:こんなにもプランがあるのですね。
山崎:「お葬式はこうあるべき」といった固定観念があると思います。中には、世間体を気にしてセレモニーを開くという方もいます。しかし、故人を見送るという意味では、そこまで葬儀が派手である必要はないかもしれません。
田中:一番大切なのは、故人の安らかな旅立ちを見送ることができることではないでしょうか。そして、心からの供養ができるような環境が残されることが必要です。そのために、できるだけプランを豊富に取り揃えて、依頼しやすい価格にしました。
菅原:価格を抑えられるのは、なぜですか?
山崎:間接的な費用を極力省いたためです。霊園以外にも、永代の個別墓や供養塔なら境内にスペースを設けられます。
田中:供養のためにお坊さんがお経を読むこと自体に、特別な費用はかかりません。私自身は、感謝の気持ちで包める「お気持ち」を納めていただくことが良いと思っています。ご遺族も寺も、お互いに感謝の気持ちを持てることが大切だと思うのです。
菅原:1人ひとりが納得、安心して葬儀を行ってほしいということですね。
山崎:はい、どのような供養をされたいか、したいのか。そうしたことを生前から考えておくことは大切だと思います。「そんなことを聞いても良いの?」ということでも、何でも聞いていただいて。ご本人やご遺族が、安心してその日を迎えるサポートができたらと思います。

セレモニーとしての葬儀と供養の実際とのギャップを埋める


菅原:なぜ、葬儀には高いお金がかかるのでしょうか?
山崎:それは、生活環境の変化によると考えています。1人暮らしや核家族が増え、住宅のスペースは限られたものになりました。親族や友人が離れた場所にいるケースも増え、一堂に集まるスペースが必要になったんです。
葬儀については、準備や手配することがたくさんあります。しかし、それらのベストな形について話し合う機会はなかなかありません。そこで、葬儀をパッケージとして提供する葬儀社が現れました。ご依頼主にとって、なくても良いメニューも含まれているかもしれません。
菅原:巨大な祭壇に生花、食事の用意など。弔いのシーンにしては、少し派手な印象があります。
山崎:葬儀が、セレモニーという名のイベントになってきたのかもしれません。それには、日本人の意識も影響しています。手厚く弔わなければ、魂が浮かばれないのではないかといったものです。
菅原:故人の旅立ちを見送るという本来の目的に立ち返ってみると、葬儀には別の形もありそうですね。
山崎:はい、そこまで豪華にしなくて良いという意見もあると思います。高額な費用に対して、不安や心配を抱える方も少なくありません。そうした1人ひとりの気持ちに寄り添って、本当に望んでいる葬儀の形を実現するお手伝いができたらと考えています。
菅原:浜松市で事業をスタートさせた背景には、葬儀やお墓に関するこの街の課題もあったのでしょうか?
山崎:浜松市は、ここ数年、行き場を失った遺骨の扱いに悩まされてきたそうです。市が管理する納骨堂は、送られてきた遺骨でいっぱいになり約500人分を処分しました。処分はどうするかというと、専門の業者によって溶かして圧縮します。494人分の遺骨は塊となって、2つの骨壺に収められるのです。2017年9月、そうしたニュースがNHKより放送されました。
▼参照
あなたの遺骨はどこへ!?~広がる新たな“処分”~ NHK クローズアップ現代より
[blogcard url=”https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4023/]
菅原:核家族化や少子化が進むほど、そうした遺骨はますます増えるかもしれません。
山崎:お墓が買えないという方や、承継者がいないためにお墓に入らない方も増えています。そういうとき、どこに相談したらよいか分からない場合が多いのです。そもそも相談していいのかと悩んでいる方もいらっしゃいます。地域に暮らすすべての方が、故人を気持ちよく見送るために、ご自身の希望を考える機会を提供できたらと思っています。

檀家からご近所まで、気軽な付き合いができる寺を目指して


菅原:田中さんは、どのようなきっかけでそうぎの窓口に加わることになったのですか?
山本:父が住職をしているこの光雲寺に生まれました。父は、寺の維持や檀家さんの負担を減らすため、一般企業に勤めながら当院の仕事をしていました。そして、今、私も同じ道を歩んでいます。
寺離れや宗教離れなど、お寺もさまざまな問題を抱える時代に差し掛かっています。世間に耳を傾けると、墓地や葬儀に関する悩みを抱える方がたくさんいらっしゃることに気付きました。お悩みをお話したいと、当院に来てくださる方も増えました。より多くの方のお力になりたい。そんな思いでそうぎの窓口に参加して、お手伝いをさせていただくことになりました。
菅原:田中さんも、1人ひとりに合った葬儀を提供したいと考えていたのでしょうか。
田中:そうですね。希望に沿った葬儀が実現できれば、費用を抑えることに繋がります。そのお金を、生前の時間を有意義に過ごすために使ってもらえたらと思うのです。旅行や食事を楽しむのも良いですし、介護サービスの充実に充てても良いと思います。そうしたほうが、幸せの度合いは増すのではないでしょうか。
菅原:寺の在り方としては、今後どのような展開を考えていますか?
田中:檀家さんから近所の方まで、気軽に関わってもらえる、“昔のお寺”のようになっていけたらと思っています。これからの世の中、檀家としてお墓の維持管理が大変で、墓じまいをする方も増えると思っています。そのときに、気軽に相談できる関係であれば、他の選択肢も提案できます。
檀家さん以外の墓地をお持ちの方や、ご葬儀・法事などを中心にお付き合いをさせていただく方を信者さんと呼びます。そんな信者の方が増えてくれたらと考えています。檀家さんも大切にしながら、より多くのお悩みを持つ方の力になれたら嬉しいです。
山崎:介護施設とも提携のお話をいただき、施設内で終活セミナーを開いたり、具体的な相談を受けたりしています。介護施設の企業さまと一緒に、よりよい葬儀のサービスをつくっていけたらと思います。
菅原:さいごに、この事業にかける想いを教えてください。
山崎:地域の需要に応える形でゆっくりと必要される企業になっていけたら嬉しいです。
田中:お寺とのお付き合いを通じて、地域の方がより安心して心地よい毎日を過ごしてもらえるようになればと思います。

編集部コメント|

誰にも必ず訪れる最期の日。費用をかけて手厚い弔いをしたい場合も、小規模ながらも精一杯の葬送をしたい場合も。浜松市は、すべての人が納得して葬儀のスタイルを選べる地域となるかもしれません。

ライター|菅原 岬

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